(6)異境の風習
みづきさんと買い物に出かけた。
帰る頃にはすっかり日が暮れて、大通りには明かりが点る。
ショーウィンドウはどこもかしこも早々にクリスマスな飾り付けで、傍らのみづきさんはそれらを見ながら黙って歩いていた。
ぼくは落ち着かない気持ちでそんなみづきさんをちらりちらりと見る――だってみづきさん、市杵嶋姫命という日本の神様に仕える女官候補だし、クリスマスのイルミネーションなんてきっと不愉快以外の何物でもないんじゃあないのかなって――
「おい、仙太郎」
「え、あ、はい」
突然、声を掛けられてびくっと肩を震わせる。
振り向いたみづきさんは、眉間に皺を寄せていて、殊更に低くトーンを落とした声で言った。
「DSが欲しいんだが、サンタさんにはどうやって連絡を付ければよいのだ?」
……誰だよ。宗像三女神の一柱、市杵嶋姫命が寵愛する女官候補に異境の風習吹きこんだのは。
「え、と、ぼ、ぼくが電話しとくよ」
これでいいのかわからないけれど、とりあえず今日も平和みたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます