第9話「どうしてこんな事に」
「みさ、き、さん」
白い壁の個室には心電図の音が鳴っている。
頭に包帯が巻かれた彼女が静かにベッドで寝ている。
「ど、どうしてこんな事に?」
僕が呟いた時、側にいた美咲さんに似た(いや、美咲さんがこの人に似てるんだよな)五十代くらいの女性、美咲さんのお母さんが話しかけてきた。
「それはですね、聞いた話では」
「さてと、明日からまた頑張ろ~」
篠田さんとのデートの帰り道、美咲は大通りの交差点で信号待ちをしていました。
すると小学校低学年くらいの男の子が信号が青に変わるのを待ちきれなかったのか、横断歩道を走っていこうとして転んでしまったそうです。
「あっ!?」
そして美咲は男の子の元へと走っていき、少年を抱き起こしたその時に自動車が
美咲はとっさに少年を歩道側に突き飛ばしましたが、美咲は逃げきれず・・・・・・
「お医者様が言うには一命は取り留めたものの、撥ねられた際に頭を強く打ったので最悪はこのまま意識が・・・・・・うう」
そこまで言った後、お母さんは顔を手で覆って泣き出した。
「そんな。く、僕が一緒にいれば」
身代わりになれたのに。
またあの時のように何もできなかった。
僕はその場に崩れ落ちた。
「篠田君、君が悪いわけじゃないのだから気に病まないでくれ」
僕の背中に触れてそう言ったのは、髪に白いものが目立つ男性、美咲さんのお父さんだった。
「……でも」
「美咲の身代わりになれたなら、なんて考えないでくれ」
「は、はい?」
僕は驚いてお父さんを見上げた。
「君はおそらくそう考えてるのでは、と思ったがどうだね?」
「……はい」
「気持ちはわかるがな、もし君が近くにいて美咲と同じ事をしたら、美咲が悲しむぞ」
僕は何も言えなかった。
しばらくして
「さ、篠田君は明日仕事だろ。何かあったら連絡するから今日は」
「……はい、失礼します」
そして僕は病院を後にした。
……また来たら美咲さんはもしかすると。
もう来ない方がいいだろな。
思えば皆僕が深く関わると不幸になる。
中学生の時よく通った小さな古本屋さんは火事にあって、一家全員が・・・・・・
高校生の時よく通ってて仲良くなったラーメン屋の店長さんは、ある日心筋梗塞で・・・・・・
仲良くしてくれた友人達も事故にあったり病気になったり。
父さんは僕が小学生の時に職場で事故死。その後母さんが僕を女手一つで育ててくれたが、僕の成人式を見ることなく過労で倒れ・・・・・・
そして彼女、「みっちゃん」は・・・・・・
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