【LN】わたしでないだれか

わたしは一人称視点で書くことが多い、とおもう。

ただし、それはわたしの実体験ではなくて、あくまでわたしでないだれか、なのだ。

それは、人でもいいし、モノでもいい。

なにかに憑依したつもりになるのだ。


そして、あとになって、それがわたしの一部だったということに気づくのだ。



バイク、いわゆるオートモービルには実際乗ったことがない。

ここ最近、普通自動車の免許を取得したばかりなほどで、もっぱら公共交通機関の他は、自転車か歩きかしか移動手段はない。


それにもかかわらず、バイクについて書いたのは、情景が思い浮かんだからであろう。

最初に浮かんだのは、一段落目だった。



ねぇ きこえてる?

このままどこか遠くに行きたいな

連れてって

無力でとりとめのないぼくを



なんとなくできたこのフレーズだったけれど、なんとなく、バイクだなって、おもった。

自転車でも車でも電車でも船でもロケットでもなく、バイクというのりもの。

たぶん、なにかことばにあらわせない悲しみのようなものがあって、ことばはいらないけれど、どこかに連れ出してほしい。

それを達成できるのりものがバイクなんだなっておもった。



でも、この主人公って一体誰なのだろう?



登場人物は少なくともふたり。

主人公と、連れ出してくれるだれか。


僕が後ろに乗ってる女の子で、きみがライダー?

僕がライダーで、きみがバイク?

はたまた、僕がバイクで、きみがライダー?


聞き手や読み手によって、解釈が変わってしまう。

これが、小説や評論とはちがう、詩や歌詞の楽しみ方なのかもしれない。


でも、いずれもやはり、わたしでないだれかの一人称視点を楽しむもの、なのかもしれない。

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