【LN】わたしでないだれか
わたしは一人称視点で書くことが多い、とおもう。
ただし、それはわたしの実体験ではなくて、あくまでわたしでないだれか、なのだ。
それは、人でもいいし、モノでもいい。
なにかに憑依したつもりになるのだ。
そして、あとになって、それがわたしの一部だったということに気づくのだ。
*
バイク、いわゆるオートモービルには実際乗ったことがない。
ここ最近、普通自動車の免許を取得したばかりなほどで、もっぱら公共交通機関の他は、自転車か歩きかしか移動手段はない。
それにもかかわらず、バイクについて書いたのは、情景が思い浮かんだからであろう。
最初に浮かんだのは、一段落目だった。
ねぇ きこえてる?
このままどこか遠くに行きたいな
連れてって
無力でとりとめのないぼくを
なんとなくできたこのフレーズだったけれど、なんとなく、バイクだなって、おもった。
自転車でも車でも電車でも船でもロケットでもなく、バイクというのりもの。
たぶん、なにかことばにあらわせない悲しみのようなものがあって、ことばはいらないけれど、どこかに連れ出してほしい。
それを達成できるのりものがバイクなんだなっておもった。
でも、この主人公って一体誰なのだろう?
登場人物は少なくともふたり。
主人公と、連れ出してくれるだれか。
僕が後ろに乗ってる女の子で、きみがライダー?
僕がライダーで、きみがバイク?
はたまた、僕がバイクで、きみがライダー?
聞き手や読み手によって、解釈が変わってしまう。
これが、小説や評論とはちがう、詩や歌詞の楽しみ方なのかもしれない。
でも、いずれもやはり、わたしでないだれかの一人称視点を楽しむもの、なのかもしれない。
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