2.
3分後。
印を使用して高速で移動したのか、4人の教師はあっと言う間に確認を終えてほぼ同時に職員室に戻ってきた。だが、その顔は一様に浮かない。
「主任、これを……」
「……これは、それぞれの生徒が持っていたプレート……? ……まさか……っ」
4人が青ざめた顔をして頷く。
「……プレートだけが見付かり、生徒が行方不明になっております。周辺を探索しましたが、誰も見つかりませんでした」
4人の内の1人が発した言葉に、学年主任が青ざめる。
「なんということだ……」
「しゅ、主任!」
職員室に慌てた声が響く。
「どうしましたか!?」
「見てください……!」
1人の教師が指差した画面を見て、学年主任は愕然とした。
先程と比べ物にならない数のペアが、完全に動きを止めている。今しがた確認した生徒たちと同じ事態に陥っていると容易に想像できた。
――更に。
「何だ、これは一体何なん……だ……?」
学年主任だけでなく、職員室にいた教師全員が息を呑んだ。
黒い波。
そう言うしかないような、得体の知れない闇が、突然ホログラムの画面を端から覆い始めたのだ。動きを止めているペア、動いているペアと関係なく、じわじわと侵食してきた黒い波によりその位置が分からなくなってゆく。
「な、ばかな、教頭が張っている高等魔法印の動きを止めるなど……一体誰が――」
「大変です!」
職員室のドアを力いっぱい開けて、息を切らした教師が駆け込む。
「こ、今度は何ですか!?」
「い、1階に……降りることが出来ません」
職員室の空気が固まる。
「な……っ、そ、それは、どういうことですか?」
「1階に降りる階段やエレベーターに、黒い靄のようなものが立ち込めているのです。触れようとすると弾かれて、魔法印も効きません。一体何が起きているのか……」
「そ、外からはどうですか!?非常階段を使えば――」
学年主任が窓に目を向けた瞬間、真っ暗になった。
「な――っ!? くそっ、『光』『光』『光』『広』――神々しき光よ、辺りを照らせ――」
即座に対応した体育教師が、職員室を明るくした。
「な、何なのこれ……っ」
女性教師がへたり込む。
窓一面に、へばりつくように黒い何かが立ち込めていた。廊下の窓も同様で、誰かが口にするまでもなく、全員が同じことを思った。
――何者かがこの学校に侵入した――
学校を襲う異常事態に、魔法印に習熟した教師陣はみな固まっていた。
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