「日向ひなたっ、日向！」

　自室の障子を全開にして畳の上に日光浴がてら寝転がっていると、ドタドタと騒がしい足音と共に桃色の着物を着た少女が障子の向こうから息を切らして現れた。

「真咲まさき？どうした、そんな血相変えて……」

「かっ……族長は？」

「ここにはいない。あいつがどうかしたのか？」

「っ……居ないのよ、何処にも、こんな一大事に何処行ってんのか――」

「一大事？」

　すると真咲はハッとした表情になる。

「そうだ、あんたが居たんだ……」

「だからどうした……？」

「あいつらが……あの子の居場所を突き止めたの」

「！？」

　日向は思わず飛び起きていた。真咲も深刻な面持ち続ける。

「それで、もうあいつらあっち側に向かったみたい……」

「……朱夜しゅやは？」

「あ……！」

　真咲は慌てて部屋を飛び出して行った。

　日向が沈って待っていると、真咲はすぐに戻って来た。

「無かったわ……まさか、奏かなではもう？」

　「行ったんだろうな……あいつの片割れの危機なんだ、勘が働いてもおかしくない………俺が追う、真咲は先代様達と迎え入れの準備を――」

　「ここに連れて来るの？」

　大急ぎで身支度を始めた日向に、彼の愛刀を渡しながら真咲が聞いた。

　「ああ・・・かわいそうだが、もう普通の生活はさせてやれない」

　真咲から刀を受け取ると日向は、目の前の空間に爪を立てて暗い穴を開き、その中に飛び込んだ。

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