第10話 ツノの短いカブト虫

「彼女な彼氏おるみたいや。君との付合いわやな、いわゆるキープちゅうやつや」

先輩はビールを片手に持ちながら串焼きをむしゃむしゃ食べながら話している。

僕はショックを受けていた。


しばらく沈黙が続いた後に僕は声を振り絞って言った。

「彼女とは別れます。」

先輩はじっと僕の目を見ながら言った。

「別れる必要はないんと違うかな。まあ付き合っていたと言えるのかといのはあるけどやね」

「でも、前に進むためにはそうした方が良いと思うんです。」


先輩は少し沈黙した後に喋りだした。

「君はツノの短いカブト虫の話を知ってるか」

「いえ」

「カブト虫には、2種類の種類がおるんや。ツノの長いカブト虫とツノの短いカブト虫とやで」

先輩の話が見えなかったが、続きを聞きたかった。

「ツノの短いカブト虫はメスのカブト虫をツノの長い奴と取り合っても必ず負けるんや。

そうなると普通ダーウィンの進化論で言うたら絶滅してないとあかんわな。

でも絶滅していない。何でやと思う?」

「何でですか?」

「それわやな。ツノの短いカブト虫は早く動く事ができるんや。力の弱い部分を早く活動をする事で補っているんや。

ファスト イート スロウ (早さは遅さを制す)やな」

「僕はどうすればいいでしょうか」

「君はもてている男と同じように動こうとしてないか。友人として接したら、ええやないか。今の男の悩む事の相談に乗ってやれ。これが活動範囲を広げていくことになるんよ」


「君はこれからツノの短いカブト虫は目指したらいいやないの」

先輩の教えは衝撃的だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る