未知なるカンパネルラ
@narusehitotsuki
第1話 タスク
目が覚めると、夕日の鮮やかなオレンジ、窓に反射したその光が全身を包んでいた。
まだ頭がぼんやりとしている。
心地よい揺れ、ふかふかの椅子。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
高校に入ってからなんとなく始めたバスケットボール部が案外楽しくて今日も練習試合でヘトヘトだった。
「寝てたのか…ここは…?」
眠い目を擦り、窓の外を見ても夕日と海に光る水面が一面に広がっているだけだった。
いつの間にか遠くに来てしまったようだが、ここが一体どこなのか見当もつかない。
この車両には他には誰もおらず、ガタンガタンという音だけが微かに響いているだけ。
「次の駅まで待つか…」
とにかく次の駅で折り返す他道はない。
一息をついてまた瞼を閉じた。
揺れに身を任せていると、ふと昔の事を思い出す。
俺にはスバルという双子の兄がいた。
今は離れて暮らしているので、記憶にあるのは小さい頃…9歳までの記憶だ。
理由はいたって単純、両親の離婚でそれぞれが引き取られたからだ。
16歳の今、気にならないと言えば嘘になるが、7年も会わずにいるといくら双子だからと言っても似ても似つかない他人になっているだろう。
血を分けた兄弟が他人になってしまうのではないか、そう思うと一歩踏み出せずにいた。
記憶の中のスバルは、いつも笑っていた。
俺を呼ぶ時には『タスク、タスク』と二回名前を言うのが癖だった。
何故こんな事を思い出したんだろう。
閉じた瞼の向こうに陽の光を感じながら、ふぅ、と息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます