第38話「いよいよ学校開校」

 オベール家の跡取り息子フィリップは……

 ボヌール村に完全に馴染み、我がお子様軍団と共に、順調に成長している。

 

 そうこうしているうちに、一方で………

 俺と嫁ズは、オベール家と交渉して了解を貰った、ボヌール村の学校創立&開校の準備を着々と進めていた。

 

 まあ、今回の学校はあくまでテスト版。

 俺や嫁ズだって学校運営は素人。

 教師だって、未経験。


 お子様軍団には悪いが、将来を見据え、いろいろ試行錯誤しながらやって行こうと考えている。

 ゆくゆくはエモシオンにも学校を創りたいという、オベール様夫婦の意向に沿ったデータ収集の意味もあるのだ。


 じゃあ……

 ざっくりと村に作る学校の説明をしよう。


 校舎は、村の大きめの空き家を活用。

 

 記念すべき第一期の生徒は、赤ん坊のベルを除いた我がお子様軍団7人、そしてフィリップ。

 更にレオの彼女アメリ―ちゃんを含め村の子供8人を加えた、計16人……

 諸事情で、年齢ごとに分けてクラスは作れないので……

 その為、生徒の年齢にもばらつきがあり、上は10歳、下は5歳といったところだ。


 主な教科は読み書き等の国語、計算ありきで算数、そして王国の歴史と世の中の仕組みを教える社会科の3つ。

 この3つ以外には、武道を含めた体育を加えた。


 教師候補は国語にクッカ、グレース、ソフィ。

 算数にミシェル、サキ、エマ。

 そして社会科は俺とアンリと言ったところ。

 体育は当然、クーガーとレベッカだ。


 前にも言ったが、本当は1教科ひとりの担当、専任教師にしたかった。

 だが、どうしても無理だった。

 残念ながら、個々で持つ他の仕事との折り合いをつけて、交代でやるしかなかった。

 

 まあ仕方がない。

 この村で、教師のみを職業とするのは基本難しい。

 充分な報酬など出せないから……

 なので、これから修正&改善出来ればという方向で、精一杯対応して行こう。

 

 ところで……

 リゼットとクラリスを、教師役にしなかったのは理由がある。

 それは両名とも、超が付く多忙だから。

 当然ふたりとは事前に話し合って、

「何故教師を頼まないのか」という理由をしっかり伝え、ちゃんと了解して貰ってる。

 幸いふたりとも、俺や他の嫁ズの気持ちをすぐ分かってくれた。

 逆に「思い遣ってくれて、ありがとう!」と返してくれたので、安心である。


 まあ俺や他の嫁ズも忙しいのだが、リゼットは最近アンテナショップの経営を通じてボヌール村の運営に意欲を見せているんだ。


 村長の俺がオベール家宰相と兼任なので、どうして行き届かない部分がある。

 だから村長代理のリゼット主導で、村の運営をやって貰う事にした。

 

 以前、自分の生き甲斐を見つけたいと言っていたリゼット。

 父が村長という、『血』が騒いだのなら、文句なし。

 渡りに船だろう。

 ちなみにリゼットは、村長代理に、ハーブ園&アンテナショップ経営という忙しい仕事の僅かな合間に……

 新たに見つけた趣味、『楽器演奏』で息抜きをしているみたい。


 片やクラリスは、洋服作りと絵描きの仕事に大車輪。

 ますます忙しくなっていたから。

 

 先にも触れたが………

 今回の旅で、カフェに飾ってあった村の風景画が売れてしまったので、店内が寂しくなった。

 本人も、いっぱい新作を描きたいと意欲を燃やしている。

 

 うん!

 楽しい村の生活に、はっちゃけるフィリップだけじゃない。

 以前から心がけてはいるけれど、改めて気持ちを引き締めよう。

 リゼットもクラリスも嫁ズも子供達も……

 家族全員、『オーバーワーク』には気を付けてやらないと。


 閑話休題。


 教師候補の話に戻ると……

 特別講師としては、ガストン副村長、デュプレ3兄弟にも依頼した。

 いずれも武道担当である。


 え?

 学ぶ科目は4科目だけかって?

 うん!

 実施する科目は、臨機応変に対応しようと思ってる。

 子供や親から希望を聞いたり、教師役の人材もあるから、全体のバランスを見て。

 もし折り合えば、更に増やしても良い。


 さてさて……

 使う教科書は、エモシオンで国語と算数の中古品を求めた。

 結構昔、王都の学校で使用されていたらしいが、書き込みもなく結構綺麗。

 だから全く問題なし。

 

 そして、社会科の教科書は、この王国の伝説的開祖の英雄譚の本を使う。

 子供達に大人気のバートクリード・ヴァレンタインという、この国の初代王のお話である。

 バートクリード様の建国から現在の王国の仕組みまでを話す、歴史の授業を兼ねたものだ。


 ペンと紙などの文房具も、同じくエモシオンで多めに買った。

 紙以外はこれらも全て中古。


 机と椅子は自家製……

 頑張って、大工仕事をして俺と村民達で作った。

 実用さを第一にした簡易なものだが、とりあえずOK。

 それなりの物が出来上がった。


 そして何と!

 この異世界には黒板もあった。

 例によって中古だけれど、これまた無事エモシオンで買えた。

 そんなに大きくはなく2m四方くらい。

 チョークは白のみ。


 地球では16世紀ヨーロッパが起源らしいが……

 何故黒板とチョークが、この異世界にあるのかは、全くもって分かりません。

 もしかしたら管理神様の『仕事』かもしれないけど、この際細かい事は置いておく。

 

 という事で、準備も殆ど整った。

 

 最後に大人だけで、事前に模擬授業を行う。

 俺達教師役がまずしっかり練習して、授業を円滑に進められるようにしなければいけない。

 更に、授業以外の段取りも充分にシミュレーションし、態勢は万全となる。

 

 こうして……

 ボヌール村にも、遂に念願の学校が開かれる事となったのである。

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