第32話ドラマCDを聴いた

 大川透さんの演技が良かった。専用の掲示板があるようだが、わたくしのPCでは見られない。過激な内容なのだろう、規制がかかってしまう。

 なのでこっそりここに書いてみよう。


 大川透さんね、まず通常状態のときと、悲しみでおかしくなりそうなんだけど抑制のためにくるえずにいるときと、声音が違うのね。

 わたくし猫をなくして胸がよどんでいたから、彼の哀しみの演技、すごくはまった! 思うように悲しめない、っていうところがシンクロしたんだと思う。じめじめっと聴くたびに涙して、最近やっと楽しみのために聴くんだって思えるようになった。でも、まあ。悲しみの表現だけ聴いてしまったりと、まだ酔っぱらっていたい気持ちもあるし、酔いしれた後はずーんと胸の奥が重たい。


 親友が死に際にあって、呼ばれるんだけど親友の恋人を連れて行こうとしたらその人は「(ほかの男の)子供が(腹に)いるからいけない」という。静かながら狂気に目を赤くたぎらせる彼。そうするうちに親友は死んでしまい、その恋人はショックで意識を失う。物語はそこから過去へとさかのぼる……。

 まあ、ざっとこういう構成なんだけれど。


 おかしいんだわ。ちょっとこの主人公は。特殊な環境で育ってきて、親友と恋人にまつわる以外の存在を歯牙にもかけない。そんな彼がまともに悲しみを表現できるわけがない。考えることもひとりよがりで、結局彼は悲しみにひき裂かれて死んでしまう。

 藤咲先生のところで学んだ「錯乱」にあたるよなあ、と思う。

 で、実際のところはその友情のありかたって、どうだったのかと思ってみると、

「アル(主人公)ってばオレのこと愛してるから、オレが死ぬとこなんかみせちゃったら、悲しみで死んじゃうよなあ」

 って、親友は簡単に想像ついてたはず。だからだれにも自分の避けられない死を「知らせるな」って言ったんだし、主人公のことを彼の恋人のロレンシアに引きとめておいて欲しかったんだよなあ。

 それを彼は「だがわたしにはわかる」って勝手に想像して、自分が親友のそばにいたら、泣き言を言ってしまうから、甘えてわがままを言ってしまうに違いないから寄せつけなかったのだ、と結論づけてしまう。

 あまつさえ「苦痛で眠れぬ一人の夜に、おまえは声なく呼んだのだろう。闇の中で、わたしの名前を」とか言っちゃう。

 自意識過剰だ。親友はカッコつけて死んだかもしれないけれど、中身のないぺらっぺらな奴じゃない。

 主人公がまともな神経をしていたら、親友は自分に心配かけたくないんだ、煩わせたくないんだ、それが彼の愛なんだってわかるはずなのに。見損なっているよ……。

 これは「人間だったら」という前提があるが、人は苦しみの中にあるときほど、愛しい人の心の平安を祈り、その幸せを願うものだ、という経験に裏打ちされた確信がわたくしにはある。だから、主人公の「あいつはこうだから」という観念は通用しない。

 と、そこだけ一点、気になったけど。テーマは「錯乱」だからにゃ。

 物語は描かれたことが全てだ。

 これは、親友を失ったかわいそうなドラゴンの物語なのだ……。

 萌えも笑いもあるし、第一に泣けるのでおススメである。

 タイトルは『やさしい竜の殺し方・外伝2』原作はビーンズ文庫の「津守時生」さんである。(つもり ときお)とお読みください。ちなみにBLです♪

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