第12話 開戦

 ついに開戦の合図の無線が入った。


 20以降の部隊の到着も告げる無線が入る。俺たちが着く前に爆発って事もあるかも。でも、今日はやけに長くかかってるような。今日は爆発なしか? そうなると早く着かないと十五部隊の囲いを突破したマウスは沢山いるだろう。昨日の俺たちも逃したんだから。


 ようやく一部隊の区域に着いた。最後の到着になった。

『NTー21部隊到着。ただちにマウスの追撃をする』

 青山先生はそう言いながらもうマウスを追撃してる。俺も逃げたマウスの後を追いかける。かなりの数のマウスが逃げ出している。やっぱり十五部隊じゃ足りなかったようだ。だけどもう囲んでる。今更陣形を変えられない。

 五機マウスを落とし六機目を追いかけてる。ん? なんだろ?……あ、嘘だろ。

『司令部、司令部!マウス単体が熱を放射してませんか? 21部隊の東出です』

 早口にそう告げる。答えが返ってくる前にマウスの光りかたがいつもと違う! と確信する。マウスはいろんな色のやつがいて一色ではなくまるで大きな筆で書いた落書きの様に二、三色を銀の下地の上に塗ってる。だが、いつもは銀に反射するから白色っぽいんだがどう見ても赤い光を放っていてそれがどんどん大きくなって、そして濃くなってる。


『司令部より、マウス単体、単体のマウスからも離れてください。熱を観測。全てのマウスから離れて下さい!』


 俺は離れての言葉でマウスの上空へ上がり大きく旋回した。急転回ならこの方が早い。

 回ったところでいたるところで爆発が起きてる。大丈夫か? 皆!


『司令部より、救助が必要な者は救援を申し出て下さい。救助に向かう者も申し出て結果の報告または救助の要請をしてください』


 昨日の教訓だろう。無事の確認より救助だ。

 次々に救援要請の無線が入る。どこに行けるか考えて無線を聞いていたら、

『21部隊長青山、森の中に墜落、機体から煙が出ているので機体から離れます』

 青山先生の救助の無線だ。早口にそう言ってすぐに無線が切れた。俺のちょうど真下に森がある。見るとうっすらだけど煙が上がってる。あそこか。

『NTー21部隊の東出。青山隊長の機体からと思われる煙を森で発見。救助に向かいます』

 そう報告してすぐにそこに向かう。ん? 木で見えない。爆発すると危険だから周りを旋回している。と木々の切れ間、機体からちょっと離れたところに青山先生が見えた。向こうはずっと前から気づいてたのか最初からこちらに手を振ってる。が、どうして助ければいいんだ? セイヴァーを森に着地させることは出来ないし、できても青山先生を運べない。森の終わりの方角を教えてみるか。銃を森の出口に向けてみる。先生は両手で丸を作り俺が示した方角に向かう。俺は先生の行く先を見守りながら進む。


 その間もずっと救助要請と救援に向ってるという無線が入る。中には破損した機体を発見との報告も入ってくる。無事な者はみんな辺りを確認しながら飛んでいるんだろう。

『NTー21部隊の東出、同部隊青山隊長を道へ誘導中、救護車を要請します、道は……』

 道の説明をしながらその道へと先生を誘導する。これは戦闘機だ。人を救うためにはできていない。昨日の南は小さかったから一緒に乗ることもできたがそれでもギリギリだった。

 間もなく道へ出そうだ。広い道なので着陸してセイヴァーの扉を開けて待っていた。

「おーい! 東出!」

 森の中から青山先生が出てきた。

「大丈夫ですか?」

 よくみると足が痛めていたようだ。青山先生は足を引きずっていた。上空からはわからなかったけど。救護車を呼んで正解だった。

「ああちょっと足をな。着地に失敗して」

「墜落を避けたんでしょ?」

 あんな場所に着地はしない。できないし。

「はは、まあな。マウスから離れようとしたら、その先に別のマウスがいてな」

 そんなに大量に逃げ出ていたのか。

「お! 救護車が来た。東出、お前は他の者の救助に回れ」

「はい」

 俺はヘルメットをかぶった。先生は立ってるのが辛いのかガードレールにもたれて、こっちに手をあげる。俺も手を挙げ返す。

 すぐに救護車がきて青山先生を乗せて次へと向かってるのか病院へか。とにかくホッと息をつく。セイヴァーの扉を閉めて飛び立つ。

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