第10話 また明日と言える今
南はなかなか出て来ない。健太郎と時間を潰している。と、また青山先生が通り過ぎようとしているのを捕まえる。
「青山先生! どうですか?」
「ああ。南以外全員の安否は確認できた。南だけ確認が取れてないんだが」
「まだ、中なんです」
「そうか。今回の襲撃で欠員が多く出た。しばらくは出動したくないな」
青山先生が辛そうに言う。正規ではない戦闘員から繰り上がってきた戦闘員を多く抱える部隊を率いるのは大変だ。戦力の大幅なダウンは避けられない。
「お、薫、南だぞ」
青山先生と話してたので健太郎が先に気づいた。
「南、大丈夫か?」
一人で歩いて出て来てるんで大丈夫そうだけど、声をかける。
「ごめん。待っててくれたの?」
「いや、あの、健太郎もいたし、心配だったし」
最初の言い訳が言い訳になってないと気づいてつい本音が出てしまった。
「南、どうなんだ?」
青山先生も心配そうに聞く。
「大丈夫です。それを調べるのに時間かかって」
「じゃあ、医者から出動停止命令は出てないのか?」
青山先生、正規戦闘員確保の為か必死で聞いてる。
「明日まで、何もなければって事なんで。明日まで停止です」
「そうか。良かった。じゃあ、俺は報告に行ってくるから」
青山先生は去って行った。ホッとしたのは二通りだろう。南の容態と正規戦闘員のこれ以上の欠員の追加がなかった事。特に南は正規戦闘員の中でもレベルが高い。
「じゃあ、俺は学校へ行くよ。セイヴァーを戻さないと。健太郎は?」
「ああ、俺は誰か来てもらってもう学校に戻してもらってるんじゃないかな」
「私は迎えが来るって、あ、お母さん! ここ!」
廊下の向こう側からこちらに向かってくる女性が南の母親だろう。病院が念のために連絡したんだろう。
「じゃあ、行くな! また明日」
「おう。明日」
「うん。明日ね」
明日と言える今があるんだと、明日という言葉で感じる生々しい戦闘。これからはこういう毎日になるんだろうか。
セイヴァーを戻すために学校の校庭へ行く。上から街を確認した。ところどころ破壊されてはいたけれど学校は被害に合わずに済んだようだ。
家に帰ると母が俺に駆け寄ってくる。いつもは見てホッとするだけが触らずに確認出来ないようだ。いやもういいから。って言いたいが、母は目に涙をためている。あ、ふと思い出す今日は正規ではない戦闘員が招集され出撃した。父は戦闘員である。父はどうだったんだ?
「あの、母さん」
俺の呼びかけにやっと手が止まる。パッと手を離して何事もない顔をする母。
「何?」
「父さんは招集されてないよね?」
「ああ。大丈夫。父さんかなり下の戦闘員じゃない?」
出撃していれば家族につまり母さんに連絡が行く。だから、出撃はしてないんだろうけど、そんな言い方。まあ、希望なんだろう。家族二人とも出撃なんて、さっきの母さんでは耐えられないだろう。
自分の部屋に入り今日こそはって思ってたのにベットに腰掛けたら爆睡していた。まただよ。今日もかよ。
大丈夫なのか俺? 受験生なのに!
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