73話「次なる戦い」

「こっちは三人、あっちはいっぱい……囲まれるのは、まずいよね」

 向かってくるリビングデッドの様子を見ながら、ミズキは呟いた。

「闇を射抜く光の刃、その先にあるのは希望の道……シャイニングビーム!」

 ミズキがリビングデッド前列の最左翼に向かって、シャイニングビームを放った。光り輝く一筋の光は太く、たくましい。そんな光は一直線にリビングデッド最右翼に向かっていく。そして、その先に居たリビングデッドに命中し、リビングデッドはシャイニングビームによって消し飛んだ。


「二人か……」

 後ろに居たリビングデッドにもシャイニングビームの影響は及んでいたらしく、後ろのリビングデッドは黒焦げになって地面に倒れていた。


「二人でも、上等だよミズキちゃん。シャイニングビームみたいなのを使っても、魔力はあまり消費してないみたいだし、これなら、このリビングデッドは一掃できそう!」

 エミナが前方の、突出した三体のリビングデッドを見据える。

「輝く剣閃けんせんを持ちし力を我に……ソードオブシャイン!」

 エミナは魔法を唱えながら、右手を開き、腰の高さに持っていった。

 開いた右手の手の平から、白い光が発せられると、その光は徐々に寄せ集まり、剣の形となった。

「ドリルブラストじゃあ、リビングデッドはさすがに無理だから……これで!」

 エミナはソードオブシャインを握り締めると、突出した三体のリビングデッドに向かっていく。


「前は私が……!」

 エミナが三体のリビングデッドに駆け寄ると、リビングデッドのうちの一体もエミナに目を付けたらしく、明確にエミナに向かい始めた。


「たぁぁ!」

 エミナがソードオブシャインを打ち振るう。エミナの前のリビングデッドは接近してきたエミナに対してパンチで応戦しようとしたが、エミナの振るうソードオブシャインは鋭く、その拳をも切り裂いた。

 リビングデッドの右腕を切り裂いたエミナは、勢いを殺さずに更にリビングデッドへと接近し、すれ違いざまにソードオブシャインをリビングデッドの胴体へと目掛けて振った。

 リビングデッドは、エミナがソードオブシャインを振り切ったと同時に両断され、地に伏した。


 エミナはその勢いのまま、振り返り、右に迫っていたリビングデッドにソードオブシャインを一振りした。エミナの素早い動きは、リビングデッドの攻撃を許すことなく、リビングデッドを切り伏せた。


「たぁっ!」

 エミナがもう一体のリビングデッドに向かっていく。エミナが体の向きを変えてソードオブシャインを構え、それを一振りする。エミナが一つ一つの動作をする度に、エミナの茶色くて長い髪、スカートのフリル、バトルドレスのリボンが激しい動きによって揺れ動く。

 エミナの動きが止まった時には、もう一体のリビングデッドも地に伏していた。


「おー、フレアグリットの騎士にも負けてない動きだぴょん」

「さすが、エミナさんは動けるなぁ」

 ミーナとミズキが感嘆しているところに、三体のリビングデッドを倒し終えたエミナは素早く戻ってきた。


「はぁ……! 最近動いてないから、息が切れちゃう」

「いや、凄いと思うよ普通に」

「むむむ……ミーナちゃんもエミナみたいに可憐な感じで動きたいぴょんね」

「接近戦はなるべく私がやるから、なるべくリビングデッドを近寄らせないようにお願い!」

 エミナはそう言うと、ソードオブシャインを構えて、再びリビングデッドの集団に向かっていった。


「よーし……ミーナちゃんもやるぴょんよ! 聖なる雷土いかづちの力を以て、よこしまなる者へ裁きを! セイントボルト!」

 セイントボルトの威力が最大限になるように、ミーナは丁寧に魔法を唱える。

 詠唱を経てミーナの手の平から飛び出した、白い稲光を纏った光の玉が、一体のリビングデッドに向かって飛んでいく。


 リビングデッドに着弾したセイントボルトは弾け、爆発を起こした。

「もう一発! 聖なる雷土いかづちの力を以て、よこしまなる者へ裁きを! セイントボルト!」

 最大限に威力を強めたセイントボルトでも、リビングデッドは一撃で葉倒せない。同じリビングデッドに向けて、再びセイントボルトを丁寧に放つ。

 二発目のセイントボルトが同じリビングデッドに命中すると、リビングデッドはようやく倒れた。

「フルキャストのセイントボルト二発ぴょんか……」


 ミーナの、少し不満そうな表情を見たミズキは、ミーナの方に寄って、言った。

「大丈夫、最初ならこんなもんだって! 一体一体、確実に倒していこうよ」

「んー、確かにそうぴょんね。覚えたてでこれだったら、まあ、いいぴょんか……でも、もうちょっと集中すれば、一撃でいける気がするぴょんが……」


「そうかも。戦いの中って、意外と成長するから、一撃、いけるかもね。よーし、僕も……闇を射抜く光の刃、その先にあるのは希望の道……シャイニングビーム!」

 ミズキの手の平から出た一筋の閃光が、リビングデッドの集団の一角を捉える。

「ん……んんっ……!」

 ミズキの顔に、苦悶の表情が浮かぶ。体勢も、前に体重をかけるように前屈みになる。

「くっ……だめだ……!」

 ミズキが体勢を元に戻したと同時にシャイニングビームも消えた。

 シャイニングビームの通った跡には、胴体の大きく抉れたリビングデッドが二体倒れていた。

「んん? 三体目まで届いてる! ちょっとだけど……」

 ミズキの指差す先には、胴体の一部が少し焦げたリビングデッドの姿があった。


「ああ、三体倒そうとしたぴょんか」

 どうやらミズキはシャイニングビームでリビングデッド三体を一気に倒そうとしているらしい。確かに、最初に比べると二体目のリビングデッドにに届いたダメージは高いみたいだ。


「……てか、端っこ狙わないで、真ん中辺を狙えば三体巻き込めるんじゃないぴょんか?」

「えー? それじゃあ意味ないじゃん。三体巻き込めないもの。シャイニングビームの威力を高くしたいのは、三体同時に倒すためなんだから」

「ん、まあ……確かにそうだぴょんね」

「……でも、その方が効率良さそうだし、そうしようか。ミーナは端っこの打ち漏らし、狙ってよ」

 ミズキが指でミズキとミーナの立っている所を交互に指差して、場所を交換しようという意思を示した。


「効率はその方がいいぴょんね。そうするぴょん」

 ミーナもミズキの考えに賛同し、場所を入れ替わった。


「よーし……闇を射抜く光の刃、その先にあるのは希望の道……シャイニングビーム!」

「聖なる雷土いかづちの力を以て、よこしまなる者へ裁きを! セイントボルト!」

 ミーナとミズキはそれぞれ、セイントボルトとシャイニングビームを放っていく。

 エミナの方も、ミーナとミズキにリビングデッドを近づけないように、かつ、効率的にリビングデッドを減らすように、ソードオブシャインを振るっている。


 ――三人のリビングデッドを処理するスピードは徐々に速くなり、遂には戦える個体は居なくなった。

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