第2章16 「魔女に支配された都市」
俺達はカイルに着いた。
着いたと言うよりも、近付いたが正しい。
ココアとメルで偵察に入りながら、俺と茜は作戦を立てていた。
「まず侑君の戦闘力だと先頭に立つのは危ないわね」
「ええ、仰る通りです」
今更ながら、俺の戦闘力はほぼ皆無だ。
剣も相手の剣を弾くレベルしか出来ないからとても戦える力があるとは言えない。
「俺は何をすれば…」
「侑君は囮になってもらおうかな?」
「え?」
「侑君の魔力は魔法を使える人は誰でも嗅ぎ付けるのよ。特に強い魔力には敏感になるわ。強い魔法を撃たれるかと思ってね」
「まぁ、実際は雑魚ですけど」
「でも、それが良いのじゃない。そこで私のココアちゃんが魔法を撃つ。そして相手の混乱に乗じてメルちゃんの剣の出番ね」
「俺は終わったらどうするんです?」
「私達に付いて来ると良いわ。その方が安全だもん」
「あはは…」
俺もやる気にはなっていたが、茜にここまで言われると心痛い。
でも今はそんな事を言っていられない。魔女を倒すのだから。
作戦を大体立て終えたところで、ココアとメルが戻って来た。2人共とても不思議そうな顔で戻って来た。
「あの…」
「どうした?2人共?」
「街の雰囲気が…」
「え?」
街の雰囲気はここから見たら静かに見え、やはり情報通り魔女のアジトになっていると思っていた。
「街が普通なんです。普通に住民が居て、生活をしていました」
「そんなはずないのに。また操られているんじゃないのか?」
「その可能性は無いとは言い切れませんが、でも魔法の気配が無いんです」
どういう事なのか理解出来ていなかったが、俺はある事を提案した。
「取り敢えず中に入ろうか?」
「え?侑君本気?」
もちろん茜は反対すると思っていたので、それを承知で言った。
「このままここに居ても仕方ないし、入ってみない。それに2人は大丈夫だったんだし」
「2人は偵察なんですから、上手く隠れながらしましたけど、侑君の事だから堂々ででしょ?」
「あはは、さすが茜さん」
「侑、私からも反対します」
ココアが途中で話に入って来た。その眼差しは真剣だった。
でも、
「じゃ、引き返すか?引き返して、フィリアに顔向け出来るのか?」
「それは…」
「俺達の第一の目的は魔女を倒してフィリアを救う。違うか?」
「合ってる」
「んじゃ、決まりだな」
「うん…」
ココアは少し不満げだったが、他に何もないと思ったのか、俺の無茶な賭けに乗った。
「メルは大丈夫か?」
「私も他に何もないですし、大丈夫です。いざとなったらお守りしますよ」
「茜さんはまだ不満げですよね?」
「当たり前じゃない!!でもここで突っ立って居られないし、良いわ」
「すみません」
こうして、俺達はカイルに入った。
でも、一見普通の街に見えたこの都市もまた罠だった。
それに気付きながらも入ったのが罠だったのだ。
俺達の考えを超える力を目の当たりするのだ。
絶望の日は目の前に迫っていた。
to be continued…
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