僕たちの映研 (中断)

天風

遠い夏の記憶

「私はいつか、大女優になるんだ!」

 遠い夏の記憶。

 燦々と照る太陽をバックに彼女は言った。

 ただの小さな女の子の、夢というにもおこがましく厚かましい、思いつきのような夢。

「……なれるよ、きっと」

 でも、僕はなぜかそれを笑うことができず。

 輝くような笑顔の少女に、そんなふうに言ってしまった。

 少女は僕の返答に、当然でしょと言わんばかりのいたずらっぽい笑みを見せた。

 少女はあまりにも眩しくて。

 僕は目をそらしてしまいそうだった。


 でも、少女はどこかに消えてしまって。

 僕は取り残されてしまった。


 それは、遠い夏の記憶。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る