7章 キャラをうまく配置する

 2~3人のキャラクターくらいは前回で設定できたと思います。

 しかし、それは最適なバランス配置でしょうか。それ以上の広がりをどう設定していけば良いのでしょう。今回の話題はそこです。


 まずキャラクターは物語に必要な役割を担っていなくてはいけません。

 引き続き、桃太郎を例にとります。

 

 桃太郎は桃から生まれて無力な状態です。育てるために、おじいさんとおばあさんが必要です。

 勇敢で心優しく育つためには、おじいさんもおばあさんも人格者で、またどちらかに武芸の心得があることが望ましいです。

 桃太郎だけでは鬼に立ち向かえません。お供だって必要です。桃太郎ではカバーできない部分を補う特技をもっているのが望ましいでしょう。

 もちろん鬼だってキャラクターです。ちゃんと設定が必要です。どれだけ強くて、どんな弱点があるか。強大になるように、吟味しなくてはなりません。


 こんな感じで、各キャラクターが物語上で果たすべき役割があり、主人公を最終目的に向けてサポートしていくはずです。それに必要な要素を持っているように、考えながら設定していってください。


 ですから、役割を果たせず力不足では出す意味がありませんし、逆に役割を飛び越えて活躍するのも考え物です。


 イヌ、サル、キジの中で、キジが実は不死鳥の子孫で、一度死ぬと聖なる炎を操る能力を持って生まれ変わり、すべての鬼を焼き払える……、なんて設定にしてみてください。


 イヌとサルいらないやん! キジだけでええやん! つーか桃太郎より強いよ! むしろこれじゃあキジ物語にした方がタイトルしっくりきちゃうよ! になっちゃいます。


 登場人物が力を出し尽くして、その役割を立派に担うこと。この枠に留めてください。重要局面で力を抜いているのが分かると、それだけでも興ざめになります。パワーバランスをきちんと考えて、役割分担させてください。



 次に会話と事態が進行するように、キャラを割り振った方が良いです。

 ボケとツッコミ役がいると話のテンポが良いと思いますが、もっと大雑把に言えば、誰かよくしゃべる奴と目的をちゃんと果たそうとする奴のどちらもを主人公の周りに配置してください。

(主人公がどれかの役割を満たしても良いです。大抵はまじめに進行する役を担っていると思います)。


 やってはいけない例はいくつかあります。

 

 例えば、「ゴルゴ13」主人公 デューク東郷と「北斗の拳」主人公ケンシロウを組み合わせてみましょう。……どっちもしゃべりませんね。無口同士が行動を頻繁に共にすると、とても進行させにくいので避けましょう。


 不真面目同士を一緒にしても物語が進まないので、おすすめしません。「ドラえもん」主人公のび太と「クレヨンしんちゃん」主人公しんのすけを組み合わせても、遊んでばかりで話が進みそうにありません。

 近い例でよくしゃべるキャラが複数いても、話がややこしくなって、収拾をつけづらくなります。基本的に同じタイプのキャラを一緒にさせると、会話の役割もかぶるので、合わせ鏡で話すみたいになって不自然な会話になります。


 主人公と、ヒロインや師匠や相方役にライバルなどは対照的な性格にした方が話を進みやすいです。設定も整えたのに、なんかスムーズにいかないなーと思ったら、組合せの相性が悪いです。そこは工夫した方がいいです。

 どうしてもそういうキャラ同士を組み合わせたいのなら、別のお供の登場人物を加えるなどの工夫をしてください。


 その他キャラのバランスとしては、登場人物全体の観点が偏らないほうが良い場合があります。

 例えば、無法者の集団を描く場合は、ちゃんと被害者の側の観点も書かないと、筆者がアウトローを全面肯定しているような書き方になり、作品の品性や倫理観が疑われる可能性があります。

 子供っぽいキャラクターばかり出していると、作者自身が狭量な価値観ではないのかと思われることもあるので、他人に迷惑を与えがちな性格の登場人物は分散させたほうが良いです。

 いろんな立場の人間が出ていたほうが、読者がどれかに共感して、幅広い世代に受けやすい側面もあるでしょう。


 こういうキャラクターの人物相関と、主要キャラクターと、どちらを先に設定するかは、どちらからでもお互いに参照し合うことになるので、同時に作っていきましょう。


 あるキャラクターを設定していて、「あれ……、このキャラ全然動かないぞ、誘導役がいるよな」「うわ……、戦闘の基礎すらないのかよ。師匠キャラ追加しなきゃ」とかはよくあることです。むしろ積極的に改修すべき部分です。

 

 また、特定キャラクターに全部詰め込むのも考え物です。主人公が進行も説明もボケもツッコミも全部やってたら、情緒不安定な変なキャラクターになります。酷いときには、脚本のために何でもやるご都合主義に見えます。

 詰め込みすぎたら、別のキャラクターに一部の役割を渡すようにしてください。適度に人数が多い方が賑やかになって楽しいです。



 大体こんなところでしょうか。

 実際のキャラクター配置については、慣れないうちは、既存の同じジャンルの大ヒット作品を想定すると、必要なキャラクターの配置を参考にしやすいです。

 もちろんアレンジは必要ですが、人物関係を把握するためにも、比較をしてみましょう。

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