屋眺記〜いつか来るその日まで〜
「はぁ……」
ため息がついに溢れでる。
いっつもすれ違う時に彼女の姿を見ていた。
灰色で艶やかな長髪と淡く優しく微笑む彼女の姿はいつでも心に浮かぶ。
胸の高鳴りが止まらない。
僕のことなんて、きっと眼中にもないんだろうな。
確かにこの学園には何万人という生徒がいるし彼女はそのなかでも特別賢いし、綺麗だ。
高嶺の花かも知れない。
けど、明日どうなってしまうか分からない。
世界は崩壊したというのにこんなところに人間を集めて何をしようというのだ。
キィ……
不意に屋上の扉が開いた。
今は授業中だから生徒が来るはずもない。
もしかして先生?
「あら、君こんなところで何してるの?」
「えっ?あ、いや……その!、」
響いた声は……僕の心を脈動させるには充分だった。
彼女はそこにいた。
そしてゆっくりと僕に近づいてくる。
「君も授業抜け出したんだ。やっぱり退屈だよね」
「で……ですねっ、」
何でこんな近くに。
肩が触れそうだ。
「ねえ、何で私達こんなとこにいるんだろうね」
「それは……その」
「私ね世界を見てみたいんだ。ここじゃあみんな私のこと凄い人だと思ってるみたいだけど本当は……弱い人間なんだ」
どうしてそんなことを僕に話すんだろうか。
「強くなりたいんだ。この世界で生き残って世界の終わりっていうのを見てみたいから。
君も、そう思わない?」
語りかけるその笑顔は僕の心を最高潮まで高鳴らせた。
澄み渡る青空の下、美人と二人。
見渡す限り、学園の施設で埋め尽くされ景色はそうでもないけれど……最高にいい。
それに……この人はなんて淑やかな美しい人なんだろう。
「思います……僕も今のままじゃ嫌だ」
心の中の気持ち、言わないと!
勇気を出すんだ!
「それじゃあ、私はそろそろ____」
彼女が立ち去ろうとする。
「あの!……さん!」
彼女が振り向く。
髪が舞い僕の方を一直線に見る。
言うんだ……!!
「あの僕、……さんのことが____っ!!」
風が舞う。
何もない日常で何か起こるかも知れないと願ったとある蛍の季節の日。僕の日常は大きく変わった____。
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