第21話
きょとんとした顔で階段の上にいる彼らを見上げるナガメ。階段を駆け下りながらそれを見ていたホウコがその勢いのままナガメに抱き着いた。
思いっきりの衝撃にたたらを踏んだナガメだったが、それを何とか抱き留める。離さないと言わんばかりにぎゅうぎゅう抱き着いてくるホウコに、ナガメの頬が真っ赤になる。
「ス、ス、ス、スガさん!?」
「なっくん、よかった。無事でよかったよぉ」
「・・・心配かけてごめんね」
抱き着かれわたわたしていたナガメだったが、ホウコの涙声にそっと肩を抱き返した。
すんすん鼻を鳴らしながら泣き始めてしまったホウコに、頬を赤くしたままどうしようかと思っていると、アマツから声が入る。
「スガ、離してやれ。スザキ、無事でよかったと言いたいんだが・・・そのブレザーと、あの赤髪の男は何で血まみれなんだ?」
「え!? あ、あーと、その」
「ドラゴンに腕食べられちゃったんだ。もう生やしたから平気」
「誰だこいつ」
「ヨマチ君、その子シロ。おれのテスターなんだ」
「はあ!? テスターが人間になれるわけねえだろ。頭でも打ったか落ちこぼれ」
「だから落ちこぼれじゃないってば!」
「ちょっと黙れクソガキ共。ドラゴンだあ!? 遊戯迷宮にいたのか!?」
「頭は打ってたよ」
「だから黙れって」
威圧をかけられてみんなが押し黙る。その中でシロだけはひょうひょうとしていたが。一気に静かになった場に、その話の内容にアマツは眉根を寄せる。
ぐぐっとできた眉間のしわに、ナガメがなんとなく小さくなっているとアマツがナガメに声をかける。
「まず、スザキは生きててよかった」
「あ、ありがとうございます」
「それと、そこの赤髪の。お前のテスターってまじか」
「まじです」
「腕生やしたって聞こえたんだが」
「青目持ちらしいです」
「‘埋めつくす‘か?」
「はい」
こっくりと頷いたナガメに本格的に頭を抱えるアマツ。青目持ちは貴重だが、その中でも特に数が少ない部類の‘埋めつくす‘。キメラの加護持ちがなぜテスターなのか。本当に意味が分からない。そもそもなぜテスターに? 化けていたとでもいうのか。まるで心を読んだようなタイミングでシロは口を開いた。
「‘覆いつくす‘かけてもらったんだ。弟に。白蛇になれる様にって」
「シロ、兄弟いたんだ」
「うん。兄が1人と弟3人と妹4人」
「大家族だね」
目の前でほのぼのと交わされる会話が頭が痛い。頭を押さえたアマツをよそに、ショウゴがかみつくようにナガメに尋ねる。
「ドラゴンってなんだよ。ここにはいねえはずだろ」
「・・・そのはずなんだけど、いたんだ。たぶん、希少種」
「希少種だったよ。ノギなし、間違いない」
「ノギなし!? お前、よく逃げ切れたなっていうか、早くギルドに連絡しねえと」
「あー・・・その、ヨマチ君。ドラゴンは、その」
「ぼくが倒しちゃったから、もういないよ」
し・・・んとその場に静寂が広がる。
泣いていたホウコまで大きく濡れた目を見開いて、シロを見ていた。ナガメ以外の男性陣はガン見である。そんな中でも関係なさそうにひょうひょうとした態度崩さないシロは自身が背負っているリュックサックとナガメの持っている魔石を指さした。
「これ、ドラゴンの鱗と魔石」
「ド、ドラゴン倒したって・・・テスターもいなくて出来るわけねえだろ!」
「いや、タザキ。‘埋めつくす‘の青目持ちならいけるかもしれん」
「どういうことですか、先生」
「あのな、ヨマチ。‘埋めつくす‘はその時に最適な体に生まれ変わるっつってもいい能力だ。だから、ドラゴン殺しに最適な体に`埋めつく‘されてんなら」
「
若干の恐れを含んだ眼でシロを見るショウゴとコヒラ。ホウコに関してはただ単に尊敬のまなざしで見ているだけであったが。ナガメに至ってはそれがなにかと言わんばかりの態度で、シロの横に立っている。ナガメと全く同じ反応のシロに、テスターはテイカーに似るのかと呆れながら、アマツはナガメに言った。
「お前、これから大変だぞ」
「え?」
「ドラゴン殺しに青目持ち、帰ったら死ぬほど忙しくなるな」
「ええ!?」
「ま、覚悟しとけ」
アマツは驚いているというか顔を青ざめさせているナガメに、苦く笑った。
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