第1295話 宝石の疑問
この口調から考えるとどうやら空狐はこの剣に見覚えが有る様だ、或いは昔見せてもらった事があるのかも知れない。
何方にしても空狐の反応が他の面々と異なっている事だけは明らかであった。
「そう、この剣は僕が父から受け継いだ物、空狐も見た事が有る剣だよ。
最もその当時は僕は剣を扱う事等到底出来なくてもっぱら父の業物、寧ろ父は僕が此れに触らない様にしていた位だったからね」
特に秘密にする気もないのか、天之御はあっけらかんとした口調で答える、だが先程の攻撃を見る限り空狐以外の面々にはとても天之御が剣を扱うのが不得手であるとは思えなかった。
その真偽を確かめたいと思ったのか、岬は
「ですが、先程の攻撃は見事な物でした、だとすれば……」
と天之御に問いかける、だが天之御は少し複雑な表情を浮かべたかと思うと
「父には遠く及ばないよ、今の技位なら父なら妖力による補助無しでもやってのけていた。
まあ、そこを競っても詮無いことでは有るんだけどね」
とやや自虐的とも取れる発言をする。
それだけ先代魔王の壁は高い物なのだろうか、それともそこはやはり違いが有るという事なのだろうか。
そんな天之御の様子を見て涙名は
「そう言えば星峰も何か剣について言いかけていなかった?その剣を知っているという訳では無い筈だけど」
と星峰に話を振る。
それは星峰の疑問を聞き出すためでもあり、天之御の複雑な表情を見てこれ以上この話を続けるのは問題が有るのではないかと思ったからでも有る。
自身も父が大きな立場に居たが故にそう直感したのだ。
最も、涙名の場合は決別する事となったが。
「ええ、その剣についている其の装飾物、私の剣の装飾物と似ていると思って……」
星峰はそう言うと自身の剣を取り出し、柄の部分にある紫の宝石の装飾を見せる。
それを見た後に天之御の剣を改めて見てみると確かにそこにも酷似した宝石が備え付けられていた。
しかし其の色は異なっており、星峰の宝石が紫なのに対し天之御の宝石は赤であった。
「確かに似ているね……同じ技術や所で作られた物なのかも知れないね」
「人族と魔神族の裏側を考えれば有り得ない話じゃねえな、それがどうしてこんな事になったのかは知る由もねえが」
「でも色が違いますね。
殿下の剣は赤、星峰の剣は紫、此れは一体何を意味しているのでしょう?」
星峰の疑問を聞いて双方の剣を比べ、涙名、八咫、岬はそれぞれに感想、疑問を述べる。
「最後のは製作者の気分じゃねえか?」
岬の疑問に対し八咫はこう返答し、其の返答は的確であるようにも思える。
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