第1266話 兵器の中よりいづる者

そして開けた穴から制御装置の内側に飛び込み、すかさず込めていた魔力を衝撃波として周囲に放ち制御装置を一気に破壊する。

制御装置を破壊する事に成功した証左なのか、巨大兵器はそのまま機能を停止し其の場に崩れ落ちる。

其の崩落に巻き込まれないようにコンスタリオが突入時に開けた穴からすかさず脱出し外に出るとそこではシレット、モイスがコンスタリオを見守っていた。


「隊長、大丈夫ですか!?」

「ええ、あのくらいでやられる訳無いでしょう」


シレットがコンスタリオに駆け寄り、心配する声をかけるとコンスタリオは心配は無用とばかりにこう返答する。

其の返答にシレットは胸を撫で下ろすが、モイスは対称的に険しい顔を続けている。


「モイス?一体どうしたの?」


その表情に気付いたシレットがモイスに問いかけるとモイスは


「隊長は大丈夫だが、どうやら大丈夫じゃなかった奴も居たみたいだぜ」


と何処か意味深な一言を発する。

其の言葉の真意を測りかねているのか、シレットが明らかに疑問を抱いた表情を浮かべるとモイスは


「あれを見てみろよ」


と崩れ落ちた兵器の方を指差す。

其の言葉に従ってシレットとコンスタリオが崩れ落ちた兵器の方に視線を向けると其の瞬間に二人の表情も困惑した物に変化する。


「えっ!?あれって……」


シレットとコンスタリオの視線の先には崩れ落ちた兵器の下から赤い液体、即ち血が滴っているのが明確に理解出来た。


「あれは血……だけど兵器が血を流す筈が無い!!だとしたらあの血を流しているのは!!」


血が滴っている場所にコンスタリオは駆け寄り、血が滴っている場所の上にある兵器の残骸をどかす。

すると其の下から人族の死体が見つかり、その死体が血を流しているのは明白であった。


「こんな所に人族が……って事はつまり!!」

「ああ、さっきの兵器の制御装置に組み込まれていたと考えてまず間違いねえだろうな」


コンスタリオの発言の後にモイスがそう言い切った事により、シレットとコンスタリオはモイスの表情の理由がこの血が流れているのを発見した事に由来しているという事を確信する。

一方モイスも発言自体はさらっと言っている様に聞こえるが、其の言葉の奥には強い怒りが感じられた。

シレットとコンスタリオもそれを感じ取っているのか敢えてモイスに対しそれ以上何かを聞こうとはしない。


「青い発光体が組み込まれていた事から検討はついていたけど、実際に目にすると……けど、此処で立ち止まっている訳には行かないわね」


人族の死体を目の当たりにしつつもコンスタリオは先に進む事を決意し、其の決意を受け取ったのかシレット、モイスも黙って頷く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る