第1171話 兵器への疑問

「まあ、仕方無い部分もあるわね。

ブント側の部隊が幅を効かせていた街は今回の一件で殆どの戦力を投入した訳だから其の大部分を失い、且つ私達に無断で大掛かりで馬鹿な事をしでかしたとなればこれ以上突っ込まれない為にも報告に消極的になるのも頷けるわ」

「確かにそうなんだけど、それだけじゃない気がするんだよね」

「それだけじゃない……つまり、ブントが何かを隠し通そうとしている、そんな所?」

「そう、ブントが何かを目論見、それを知られたくないが為に当たり障りのない報告書を送る様に指示を出している。

そんな気がしてならないんだ」


星峰と涙名が交わす会話はどことなく不穏な空気を漂わせるものであった、だがそれは同時にブント側もこうした見え透いた手を打たなければならない程に追い込まれているという見方も出来ると考えてもいた。

其処に


「報告書だけじゃないわ、件の発掘現場周辺で兵器の動きが活発になってる。

だけどキャベルに侵攻するような動きは今の所見られない。

それも又ブントが戦力を整えている事の裏付けとして考えられない?」


という声と共に空狐も現れる。


「空狐も来たんだね、まあそれは良いとして、例の発掘現場から出現している兵器、それが今も数を増やしているとなると看過は出来ないね」

「ええ、只一つ気になるのは今回の一件においてどうしてこの兵器がブント側の兵士を襲ったのかという点よ。

勿論解析が進めば判明するんでしょうけど、それだけでは説明出来ない部分がある」

「空狐達が言っていた様にブントが其の事を知らずに兵器を投入してきた事だね」

「ええ、考えれば考える程分からない。

幾ら何でもそんな無茶苦茶な兵器を投入するとは正気の沙汰じゃないもの。

まだ辛うじて考えられるのはその兵器の詳細をブントの上層部も把握していなかったという線だけど、もしそうだとしたらあの兵器は……」

「とち狂った奴がとち狂った目的の為に作り出した兵器かもしれない、そう言いたいのね」

「まあ、それも今後の解析次第でわかることだよ。今は解析結果を待ちつつ、件の発掘現場と兵器、ブントの動きを注視して行こう」


星峰、空狐、涙名の会話がこの様な形で会話を終えるのと時を同じくして部エルス内部に通信が鳴り響く。

三人が耳を傾けた其の内容は


「ブエルス内部の殿下と周囲の皆様に御連絡です、霊諍様より至急秘密基地に来て欲しいという御連絡が入りました」


という物であった。

それを聞いた星峰は


「疑問の答えが早くも明かされる時が来たのかもね」


と言いながら転移妖術の準備を始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る