第1023話 不自然すぎる指示

「ええ、必ず解析してブントの勝利に役立てるつもりです。

既に魔神族もこの兵器の存在に気付き先手を打って来た以上、時間的な猶予はありませんからね」


司令官がそう強く告げるとアンナースは


「そう、なら良いのだけど……それにしてもコンスタリオ小隊と偶然出くわしたばかりにこんな事になるなんてね……運が悪いわね……」


と呟くが、その表情は単純に落ち込んでいるとは思えない様な複雑さも見られた。内側に何か言葉に出来ない物があるのだろうか。

一方、そのコンスタリオ小隊はというとそのままコンスタリオの自室に戻る……のではなく、ブエルス防衛部隊司令官の部屋を訪れていた。


「そうか……キャベルの司令官がその様な指示を出していたのか……」

「ええ、司令官殿が私達に作戦行動参加の自由を与えて下さったお蔭でアンナース一人をあの兵器の群れに行かせずに済みました」


報告を行うコンスタリオに司令官は


「そうか……しかし、仮にも実力があるとはいえ、外部の協力者に単独任務を依頼する等……」

「ええ、通常の命令系統では考えられません。

恐らくは軍とは別の思惑が動いている物と推測出来ますが……」

「その点については私も追求する必要があるな。

そちらについては私の方でも対応を検討する、コンスタリオ小隊には引き続き独自行動の権限を与えておく。

何かあった際には私を通さずとも直ぐに行動する事が可能になっているという事を念頭に置いておいてくれ」

「了解」


それだけを告げるとコンスタリオ小隊は退出し、一人になった司令官は


「ブントが回収を命じたという事は、やはりあの兵器はブントにとっても未知なる物という事か……殿下がおっしゃっていた通りに。

となると、殿下のおっしゃっている通り、この戦乱に大きな海練が起こるのもそう遠くは無いのかもしれんな。

彼等にももう少し関与してもらうしか無いか……」


と何処か複雑な、しかし一方で決意を固めた様な口調で呟いていた。

一方、退出したコンスタリオ小隊はその足で今度こそコンスタリオの自室に戻っていたが、そこにはシレットとモイスの姿もあった。


「あの……隊長、司令官がこのタイミングで独自の行動を許可したのは偶然だと思います?」

「……その質問をするという事はシレットも気になっているのね、私も恐らくシレットと同じ考えよ」

「俺も多分そうだ、幾ら何でもタイミングが良すぎる、いきなりそれが役立つなんてな。

しかも地下に向かうように言われたのは他ならぬその司令官の言葉だ」


シレットがコンスタリオに問いかけるとコンスタリオはその疑問を共有している事、そしてモイスも同じ疑問を抱いている事を口にする。

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