第1021話 手を取り合う時

「これまでに無い兵器か……ここに来て新たな脅威が増えるのは問題ね……唯でさえ戦乱が大きな局面を迎えようとしているのに……」

「寧ろ大きな局面を迎えようとしているからこそ現れたのかも知れませんね、そしてもしそうだとするのならばあの兵器を送り込んだ奴にとってこの戦乱が大きな局面を迎えるのは望ましくない事、或いはそれに乗じて何かを仕掛けるには都合が良いという事になる。

これは愈々人族と魔神族が争っている場合ではなくなってきたのかも知れませんね」


懸念を隠しきれないコンスタリオに対し、霊諍はこう告げる。

それに対しコンスタリオは


「そうね……確かにそうなのかも知れないわね。

今こそ人族と魔神族が手を取り合うべき時が来たのかも知れない」


と霊諍の意見に同意する。


「ちょ、一寸待って下さい!!今の兵器を送り込んだのが魔神族でないとどうして言い切れるんです!?

魔神族が一人迎撃に来た位で……」


話がトントン拍子に進んでいくのに焦ったのか、アンナースが唐突に疑念を投げかける。

それはブントとしての立場の悪さでもあるのだろうが、自分を外して話が進んでいく事に焦りを感じたようにも見える。


「もし今の兵器を送り込んだのが本当に侵攻の意志がある魔神族なのであればこんな所で油を売らず、もっと早くにこの通路の奥に来ている筈よ、こんな所にとどまらせておく意味はなにもないのだから。

それにここで人族部隊が兵器を迎撃したのであれば消耗した鋤を衝くか或いはもっと準備を整えてから改めて進行してくる筈、こんなどっちつかずな選択肢をするとは思えないわ」


アンナースの疑念に対し、コンスタリオは明確な返答を行う。

其の返答は確かにそう言われればそうであると言える内容であり、アンナースもそれ以上聞き返してくることはなかった、否、聞き返せなかったというべきだろうか。


「では、お互いこの新たな脅威に備える為にこの残骸を収集致しましょう。

いえ、そもそもあなた方はそれが目的でここに来られたのでは?」


霊諍がそう問いかけるとコンスタリオは


「そう言えばそうだったわね、危うく失念するところだったわ」


と返答し、それを聞いた霊諍は


「では、此方は少々持ち帰れば事足りますので後はお持ち帰り下さい、また縁があればお会いしましょう」


と告げ、其の言葉通り少しの兵器の残骸を手に取るとそのまま其の場から去っていく。


「何故……あの魔神族の言葉を信用したんです?」

「さあ……なんでかしらね」


霊諍が去った後、アンナースがそう問いかけるとコンスタリオは何処か惚けたような返答をする。

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