第843話 誰がための問いかけ

「何れにしてもそう簡単に結論を出していい問題ではなさそうだね……だけどあまり長く保留にもしておけない。

此の問題については私が何とか答えを出すから貴方達は……」

「星峰、それは違うよ」

「えっ……!?」


星峰が動じた声を上げたのはその返答に対してではない、その返答をしたのが天之御出会ったが故に動じた声を上げたのだ。

もしこの声を上げたのが天之御ではなく涙名であったなら星峰は少なくとも此処まで動じた声を上げたりはしなかっただろう、其れ位天之御の発言には意表があったのだ。


「コンスタリオ小隊との問題は決して君と、そして君と涙名だけの問題じゃない、僕達全員、敷いては人族と魔神族全体に関わる問題なんだ。

誰も見物なんて出来ない、全員が主体性を持って関わらなければならない問題なんだよ」


続けて天之御が発したその言葉も星峰を突き動かしたのか


「……そうね、ありがとう……又私は一人で抱え込もうとしていたのね」


と少々内省する様な発言をした後天之御に感謝の弁を述べる。

実際感謝はしているのだろう、その星峰の顔には申し訳無さと共に嬉しさが感じられる。

その直後に西大陸から通信が入ってくる。

その送り主は人族部隊であった。


「人族部隊から通信?緊急事態ではないようだけど……」


天之御が疑問を抱きつつも通信に応対するとそこには先日の作戦で共同前線を張った人族部隊の指揮官が映し出される。


「君から?何かあったの?」

「いえ、何かと言う程ではありませんが……先日の作戦の後にブント側の部隊が撤収したタウンの調査をしていた所、先史遺産の遺跡から入手したと思われる技術が幾つか発見されたのでそれをお伝えしようと思いまして」


天之御が通信の目的を尋ねると指揮官はこう返答し、それを受けた天之御は


「分かった、その技術のデータが有るならすぐに転送して。

此方にあるデータと照合して一致しないものがあればそれは新規の技術である可能性が高いから。

ただし、くれぐれも無理して深入り調査を行うなんて事はしないようにね……

君たちに命令できる立場じゃないけど其れ位先史遺産の技術は危険なんだ」


と返答する。

その返答を受けて司令官は


「……それは身に沁みて分かっていますよ」


と何処か訳ありな返答を行い、通信を切る。

その直後に人族部隊から送られてきたデータを受信し、星峰が早速称号に取り掛かる。


「これは……どうやら彼等は複数のタウンを並行して調べているようね……照合には少し時間がかかるわ」


送られてきたデータを見て星峰は少し大変そうな顔をする。

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