第812話 重なる仮説
「兵士は完全に意識を失ってる、素人が入ってきて内乱を起こしたって訳じゃないわね」
「だけど抵抗した様子も無い……となると、考えられるのは……」
涙名と空狐が動揺したのは単に部屋の中の兵士が倒れていたからという訳ではない。
部屋の中の兵士が倒れているにも関わらず交戦や抵抗をした痕跡が一切見られなかった為に困惑しているのである。
「部屋に敵が入ってきて全く無抵抗のままやられるとは考えにくい……にも関わらずこれだけの数の兵士が意識を失っているという事は、考えられるのはもうそれしか無いか」
だがその状況でも一瞬動揺はしたものの、直ぐにある仮説に行き着き、その動揺はなりを潜める。
「考えられるのがその先しか無いという訳じゃないけど、この状況じゃそれ以外の線を考える方が難しいわね」
その仮設を口に出しつつ、二人は部屋に置かれている電源が入ったままの機器を操作していく。
するとそれは別の部屋の機器も制御しているらしく、涙名がスイッチを入れた瞬間に何処か別の部屋が映し出され、その部屋の機器が動作し始める。
「えっ!?いきなり他の部屋の機器が……そうか、これで……」
他の部屋の機器が動き出した事に又しても動揺する涙名だったがやはり直ぐに冷静さを取り戻しその部屋の機器が別の部屋の機器を操作出来るようになっている理由を考え始める。
「涙名君?一体どうしたの?」
声を上げたと思ったら黙って考え事を始めた涙名を不思議に思った空狐が涙名に話しかける。
すると涙名は
「空狐、これを見てよ。
他の部屋の機器がこの部屋から制御出来る様になってる、けどそれ以上に重要なのは……」
涙名はそう言うと空狐に手元の機器を見せ、どういった機器がその部屋から操作出来る様になっているのかを確認するように促す。
促されるままに空狐がその手元を見、その操作先の機器を確認するとそこには人造生命や兵器の生産プラントが映し出されていた。
「これは……つまり、この部屋は」
「恐らくはこの部屋から生産プラントを制御出来る様にしておいたんだ、そうすればこの要塞の戦力の殆どを事実上この部屋からだけで管理出来る。
恐らく此処まで敵が到達してくる事はないと考えていたんだと思う」
空狐が確認した映像は涙名の仮説を裏付けるには十分すぎる説得力があった、それだけその映像は印象的であったからである。
「つまり、この部屋から戦力を供給し、適切な対処をしていた……
だけどこの部屋がこの状況ということは、やはり彼等なのね……」
そしてその状況は先程の仮説も更に強化して裏付ける。
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