第754話 忌諱すべき炙り出し

その後の出撃風景は見慣れたものではあったが、その雰囲気は明らかに何時もより殺伐とし、皆神経を尖らせていた。


「一体どうしてオペールタウンがいきなりこんな無茶をしたんでしょう……しかも他のタウンを巻き込んでまで……」

「ああ、しかもその内容は遠回しではあるが協力しなければお前達も只では済まないという強迫なのは明白だぜ。

そんな強引な手段を使ってまでしなきゃいけない侵攻なのかよ!!」


移動途中のシレットとも椅子の会話にも明らかに動揺や怒りが混じっていた。

それを聞いたコンスタリオは


「……もしかしたら、その協力に応じるか否かを調べるのが狙いなのかもしれないわね」


と呟く。


「協力に応じるか否かを調べるのが狙いって……?」


コンスタリオの唐突な呟きに呆気に取られたのか、シレットの疑問からは動揺は消える。


「あの魔王がやっていたように一見すると自分達側だけど、実際は自分達側に害をなす存在が内部に入り込んでいる可能性がある。

それを炙り出す為に無茶苦茶な指示を出したのかもしれないって事よ」


コンスタリオはこう返答する。


「じゃ、オペールタウンもスターの言っていた裏側を討伐しようとしてるって事か?」

「あるいはその逆にオペールタウンがその裏側に支配されていて魔王達を疎ましく思って殲滅しようとしているかね」


若干の楽観性を持ったモイスの発現に対しコンスタリオはそれは現時点では禁物であると言わんばかりの返答をする。

だがそんな事はモイスも重々承知であった。


「もしそうだとすると、今回の一件に協力しなかった部隊は……」

「オペールタウンが属している側と敵対している側というのはほぼ確実ね。

そしてその舞台は私たちにとって敵なのか味方なのか……」


シレットの口から漏れ出る不安に対しコンスタリオも又不安げな言葉を口にする。

どちらに転んだとしても人族内部に癌細胞が存在しているのは明白である為だ。


「そろそろ合流予定のエリアに突入しますね……え!?一寸、これって……」


シレットがふと飛空艇のレーダーを確認し、合流予定のエリアの様子をチェックするが、その直後にシレットの顔色が変わる。


「どうしたの?シレット……」


その顔色の変わり具合にコンスタリオも不安を覚えたのか同じくレーダーを確認する。

するとそこには人族部隊とそれと交戦する魔神族部隊が既に集結しており、嘗てない程の大乱戦になっていた。


「あれだけの大部隊をみすみす逃してはくれないとは思っていたけど……もう交戦が始まっているなんてね」


そう語るコンスタリオの発言には何処か安堵のようなものも感じられた。

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