第752話 終焉への始まり

「ならばその同志に撤退命令を出せば済む話だ、にも拘らずそれをしないままにお前達は命令に反しその場を離れた。

そしてあろう事か此方に戻ろうとし、結果としてこの本部を危険に晒す可能性を考慮していなかった」


尚も攻め立ててくる上司に指揮官の顔は強張り、その口は動かせなくなる。

本部を危険に晒す可能性は確かに存在しており、それに対し反論する余地がなかったからである。


「貴様の命令違反が初犯である事や影響力も考慮すると今回は特別に厳重注意だけで済ませてやる、だが次があると思うなよ」


上司はそう告げるとその場から去っていくが、その動作には明らかに苛立ち、怒りが感じられた。

上司からの尋問に近い責め苦を受けた指揮官に部下が


「大丈夫ですか、指揮官……」


とその身を案じながら駆け寄ると指揮官は


「ああ、あの上司の責め苦は何時もの事だからな、一々反応はしてられん」


こう返す指揮官だが、その顔と声には明らかに疲労が感じられた。

恐らくは本人も言っている通り、上司から責められたのは今回が初めてではないのだろう。


「あの上司、何か隠してる雰囲気がありますよね……」


駆け寄った部下の一人がそう呟くと指揮官は


「隠している雰囲気……か。

それは私達も同様なのだが……最早黙っている事は出来ないか……」


そう思うと指揮官は


「総員に今から伝えねばならぬ事がある、今から私の部屋に来て欲しい」


と疲労を感じさせる声で口にする。


「え……それってどういう意味なんです!?指揮官……」


駆け寄った兵士の一人が明らかに動揺した声を上げると指揮官は


「すまんが……ここではそうとしか言えん、頼む、私の部屋に来てくれ……」


指揮官がそう言うと周囲の兵士は何も言わず只指揮官に同行していく。

最も、数名の兵士は動揺した顔を見せていたが。

翌日、人族拠点において床に就いていたコンスタリオの元に連絡文書が届く、それは端末から送信されていたスターからであった。

スターの名前を確認したコンスタリオはすぐさまその内容を確認する。


「スターからの連絡……えっ!?あの森で兵器が大量に侵攻し、現地の人族部隊や魔神族部隊と交戦した!?」


文章の内容は昨日の交戦内容を断片的に纏めた物であったが、コンスタリオはそれを見て明らかに動揺した表情を見せる。

この様子から考えるとどうやらコンスタリオ小隊にはこの一件についての情報は伝わっていなかったのだろう。

それを見たコンスタリオはすぐさまモイスとシレットを呼び出そうとするが、その直後にサイレンが響き渡る。

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