第717話 歴史を紡ぎ、未来を紡ぐ。

「つまりそいつ等はブントの上層部、或いはそこと深い繋がりを持つ第三の勢力の可能性も有るって事だね」

「そう言う事になるわ。

最も、今もそいつらと繋がっているのかどうかは正直分かりかねるけど……」


涙名の発言に対し、星峰は珍しく語尾を濁す。

それだけ自信がないという事なのだろう、周囲も星峰の表情からそれは読み取る事が出来た。


「ブントと深く繋がる第三の勢力か……だとしたらブントの歴史を紐解けば何か掴めるかもしれませんね」


霊諍がそう告げると天之御は


「確かにその可能性はあるね、どの道現状では他に手掛かりも存在していないし、その線で当たってみよう」


と霊諍の意見を肯定する。

意見を肯定してもらえたからなのか、霊諍の顔に微かだが確実な笑みが浮かぶ、そこに施設の研究員らしき人族が入ってきて霊諍に何かを耳打ちする。


「そうか……分かった、引き続きお願いするよ」


耳打ちの後霊諍はそう回答し、その人族は再び持ち場へと戻っていく。


「今の……人族だけどここの従業員なの?」


空弧が不思議そうな顔をして霊諍を見つめ、そう問いかける。すると霊諍は


「ええ、ですが今の彼女はずっと前からここで協力してくれていましたよ。

まあ、皆さんとは初対面ですが。

人族側に属していた経験を元に主に人族側のエリアから採取した先史遺産の解析を担当してもらっているんです」


と極自然に返答する、その様子からするとその言葉は真実なのだろう、最も、この状況で虚言を告げる利点は霊諍にとって何もない訳だが。


「ここでも人族と魔人族が手を取り合っているんだね……僕達も目指さなくては、その為にも!!」


天之御はそう声を高く告げる。如何やら天之御も今の人族については知らなかったようであるが、霊諍は部下ではない以上その事について特に言及する事はしなかった。


「僕達も戻って歴史の資料を探ってみよう、もしかするとブントとその第三勢力の繫がりが何処かに記載されているかもしれない」


天之御のその言葉にその場に居た全員が首を縦に振り、一同は転移妖術で帰路に就く。

だがその行先は何時ものブエルスではない、北大陸にある魔王の城であった。


「ここは……魔王の城ね、ここにある資料からまず探るって事?」

「うん、ブエルス側の資料は以前制圧した時に一応だけどチェックしてるし涙名も居る。だけどこっちはまだ全ての資料をチェック出来ていないんだ。

城と言っておきながら恥ずかしい話だけどね……」


星峰の問いかけに対し、天之御はどこか自虐的な返答をする。

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