第712話 荒れる街の防波堤

「今回の襲撃で此処の司令官だった奴はこのタウンのブントの支配をより盤石にする為、どさくさ紛れにこのタウンのブントに属していない住民を兵器に抹殺させるつもりだったの。

それらの住民をいい加減なシェルターでいい加減に警護する事でね」


岬はそう真実をコンスタリオ小隊に対して話す、その言葉を聞いたコンスタリオは愕然とした表情を浮かべずにはいられなかった。


「人族と魔神族の争いを引き起こしているだけでなく、属していなければ同族であろうとも利用する……そんな連中が各地で好き勝手をやっているというの……」


そしてその愕然とした表情のまま俯き、力なくこう呟く、その姿は痛々しいとしか言いようがなかった。


「僕達の方でもこんな事例は初めてだよ、同族を生贄にしようとするような事をするなんて……だからこそ、こんな奴等を野放しにしておくわけにはいかないんだ」


そう発言する天之御の姿は一見すると普段と変わりない、だがその内心には確実に怒りが満ちていた、コンスタリオ小隊はそれに気付く筈はないが星峰達魔神族側はそれを全員が察していた。


「今の言葉が耳に入っていればこの暴動も治まりそうなもんだが……そうならねえってのが逆にその正しさを証明してるな」


岬と天之御の発言を聞き、モイスがそうぽつりと呟く。

モイスの言う通り、今ここで話されていた事はこの暴動を止めるには十分な効力を持っていたが、それが起こる事は無い。

魔神族の侵攻を主張しているのはブントの構成員であり、構成員がそれを認める筈がないからである。


「ついでに言ってしまえば、駐在している人族部隊が制止しようとしないのもその表れなのでしょうね」


シレットが続けてそう告げる、彼女がそう呟いたのは各地の駐在部隊は騒動を抑える治安維持部隊としての一面も持ち合わせており、此処に人族部隊が来ないと言う事はそれを放棄しているに等しい事だからである。


「職務怠慢もいい所ね。

だけど……今はその方が都合がいいかも」


俯いていた顔を正面に向けたコンスタリオ、その顔には何かを感じさせる。


「貴方達、此方に目をやりなさい!!」


そう叫んだかと思うとコンスタリオは手元から自身の所属を記載した端末を見せ、その端末についている何かのスイッチを入れる。

するとその端末から音が鳴り始め、その音を合図にしたかのように人族は一斉にコンスタリオの方に向き直る。


「?一体どうなっているの?さっきまで言葉を聞こうともしなかったのに……」


この状況に当然の様に疑問を抱く空弧。

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