第603話 不自然が重なる

その赤い光は壁を伝い、明らかに一行を何処かへと案内しようとしているのが分かる。

あの光に導かれるがままにコンスタリオ小隊が移動を開始すると光は壁を伝ってどんどん移動していき、やがてとある扉の前で止まる。

その直後にその扉が開き、その奥には先程の女性とその隣に男性が並び立っている。その男性が指揮官なのはコンスタリオ小隊には容易に検討がついた。


「噂に名高いコンスタリオ小隊とこの様な形でお会い出来るとは嬉しい限りですよ」


その男性はふとそう漏らす。


「それは嬉しいですね、これまで来た事も無いタウンの方にまでお名前を憶えていてもらえるなんて」


コンスタリオはそう返答する。だがその声からは言葉の内容とは裏腹に余り喜びが感じられるような雰囲気ではない。

一方、男性の話し言葉も又不自然であり、何処かおべんちゃらを垂れ流している様にも思える話し方であった。

モイスとシレットはこの両方に引っ掛かりを覚えてはいたものの、敢えてそれを口にすることはなかった。


「で、早速本題に入りますが、通信機をお借りしたいと言う事ですね」

「はい、其れも出来れば私達だけで通信させて頂きたいのです」


男性からの確認するような問いかけに対し明確な返答を返すコンスタリオ、その間は全く存在しておらず、コンスタリオの返答はあらかじめ想定されていた事を伺わせる。


「貴方方だけで……ですか、本来であればお聞き出来る様な内容ではないのですが、まあ噂に名高いコンスタリオ小隊たっての希望とあらばお貸しするのもやぶさかではありませんよ」


男性はそう答えるとその場から作業をしている兵士達を部屋の外に下がらせる。どうやらコンスタリオの要求を受け入れるという意思表示の様だ。


「ありがとうございます。こちらの無茶な要求を聞き入れて下さった事、感謝します」

「いえいえ、魔神族を討つ同志である以上、この様な場で不要な諍いを起こしたくはありませんから」


取り敢えずと言った口調で謝礼の言葉を述べるコンスタリオ、それに対する男性の返答も何処か裏がありそうな雰囲気を感じさせる。


「では、ごゆっくりお使い下さい」


男性はそういうと部屋を後にし、そのまま去っていく。それを確認したコンスタリオは司令室内の通信機を手に取ると何かを確認し始める。


「どうしたんですか?それにどこに通信を入れるつもりなんです……!!」


シレットがコンスタリオに何かを確認しようとするが、その手元を見た瞬間にその顔が訝しい物に変わる。

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