第494話 悪夢を生み出す存在

モイスがそのような声を上げたのは単に悪夢を再現した光景だからと言うだけではない。それが制圧されていたとはいえ人族のタウンの中に存在している。その事実が悪夢の再現以上にモイスを困惑させているのだ。そしてその困惑は残る二人、シレットとコンスタリオも同様であった。


「どうして……どうしてこんな物がこんな所に……」


動揺し、信じられないという雰囲気を隠し切れないシレット。そんな中コンスタリオはカプセルの中を確認し、近くにあった機器を調べる為に電源を入れる。


「た、隊長……」


困惑した声のままコンスタリオに話しかけるシレット、そんなシレットに対し


「今やるべき事をやりましょう」


とあくまで冷静に努めようとするコンスタリオ、だが彼女もその内心には少なからず困惑と動揺を抱えていた。故に冷静なのではない、努めてそうあろうとしているだけなのだ。それを証明するかのように機器の電源を入れ、動作動作を開始したと同時にカプセルからも動作音が聞こえてくる。それに対しコンスタリオが一瞬ではある物の身震いを見せたのがその動揺を表している。


「う、動き出した!?何がどうなるってんだ……」


モイスがそう言うと起動し始めたカプセルの扉が幾つか開き、その中から魔神族の兵士が出現する。


「魔神族の兵士!?なら基地司令部に居た兵士は……」


シレットがそう叫ぶとコンスタリオは


「ええ、ここで生み出されていたと考えてまず間違いないわね」


とシレットの言葉に続ける。


「ならこの会社は魔神族に制圧された後で作られた物なのか?」

「それはまだ分からないけど、とにかく迎撃するわよ!!」


モイスの疑問をとりあえず保留し、魔神族の兵士を迎撃するよう促すコンスタリオ。幸い生み出された直後と言う事もあってかその動作は素人そのものであり、コンsヌタリオ小隊が本気を出すまでもなく蹴りの一撃で迎撃することが出来た。


「生み出されたばかりの兵士であればこの位なのね……だとすると、隣の訓練場は兵士の訓練の為に併設された物と考えてまず間違いないわ」


コンスタリオがそう言う途中、別のカプセルの扉が開き始める。


「又来ます!!このままじゃ……」

「止むを得ない、ここは退くわよ」


それに気づいたシレットの一言によりコンスタリオはこの場から退却する事を決め、機器の電源を落としてその場から退却する。

だが息つく暇もなくコンスタリオの持つ通信機に通信が入ってくる。その発信先は松波街防衛部隊の援護に向かわせた部隊からだった。

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