第480話 繋がる処方箋
「セオリーだけで測るのは問題だとは思うが……だが今回は明らかにそう考えた方がいいんだろうな」
そうモイスが口に出す。
「ええ、それを何もせずただじっとしているだけ。これでは寧ろ魔神族に侵攻してほしいと言っている様な物だわ。まあ、にも拘らず何故それをしてこないのかと言う疑問はあるけど」
「確かに……まるで魔神族がこちらの内情を知り、それを読んでくれているみたいですよね。実際そんな事が有り得る訳ないのに」
あくまで慎重な解析を続けるコンスタリオに対しシレットは軽口を叩く。だがそれを聞いたコンスタリオは
「もしかしたら……今のシレットの言葉で正解なのかもしれない。そして、そう考えればスターの言っていたこの戦争の裏にも繋がる。だとしたらあの無謀な進撃を行った部隊とそれで意気消沈している部隊、魔神族は繋がっている?」
と疑念を深める。当然口には出せないが、図らずしもコンスタリオは事態の真相に迫りつつあった。そこに
「おや、こんな所にいらしたんですか」
と聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。それに反応した三人が振り返るとそこには部隊司令官が立っていた。
「おや?驚かせてしまいましたか?」
茶化す様にコンスタリオ達に話しかける司令官、だがコンスタリオ達の顔は大して変化することもなく司令の顔を見つめていた。
「いいえ、それより司令官はどうしてここに?私達が来ているのは兵士から聞いたにしても狙って此処に来るというのは不可能でしょう」
「ええ、狙って来るのは不可能です。街中を監視するシステムでもついていれば話は別ですけどね」
司令官の話し方は冗談ともそうでないとも取れる油断ならない音程であった。それを聞いたコンスタリオは
「所で、この街も大分空気が重い様ですが、やはり例の侵攻作戦の失敗が原因なのですか?」
と狙ってか狙わずか自身の中の疑念の核心をぶつけてみる事にする。すると司令官は
「ええ、兵士達の士気はあの作戦失敗以来低下の一途を辿っています。私は何とかそれを食い止めようと現状を見渡しているのですが、これはそう簡単には行きません。
この状況を何とかするには作戦の勝利の様な朗報が必要不可欠でしょう」
と続け、タウン全体の空気の重さを認めた上で回答を返す。それを聞いてコンスタリオは
「遠回しに処方箋をねだっている様にも聞こえる口調ね……だけど、確かに処方箋にはなるかもしれない」
コンスタリオは内心でそう感じる。更に司令は
「なので現状、このタウンで得られる物は少ないでしょう」
と続ける。
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