第462話 世界をまたぐ戦乱

「いえ……もしかしたら私達の世界で今起こっている戦乱自体、この世界から場所を移して行われているだけなのかもしれない……」


星峰が口にした仮説はあまりに規模が大きすぎる物であった。それ故天之御でさえも困惑を隠しきれない。


「そ、それはあまりにも規模が大きすぎない……」


直後に口を突いて出たこの発言がその困惑を表していた。


「私だってまだ十分に検討した訳じゃないわ。ただ、もしかしたらこの世界を滅ぼした戦争を引き起こしたのがブント、或いはその前身と言える組織なのかもしれないと言う仮説は成り立つの。

もし、この声明を生み出す技術と兵器を作り出す技術を私腹を肥やす為に悪用する連中が集まってしまったとしたら、そしてその戦いの規模が拡大して収拾がつかなくなってしまったのだとしたら」


天之御の困惑は理解しつつも星峰は仮説による戦乱の発生パターンを説明する。その説明は確かに理は通っており、強引な解釈とまでは言えなかった。


「そして収拾がつかなくなった結果生命はこの世界を放棄し、僕達の世界にその一部を持ち込んで再び争い始めた……その後ブントとして再び生誕した亡者達によって言い様に操られながら」


涙名が困惑と怒りの混じった声でそう語る。その感覚は他の面々も同じであった。困惑と、それが事実であるとするならと言う怒りが同じ位の強さでその内心に渦巻いている。


「でも、そうだとするなら誰がその世界を移動する手引きをしたのかって話だ。他の世界に逃げるにしても、そもそも他の世界が存在しているという事実が確認できなければ単なる賭博で終わってしまうだろ」


八咫がそういうと星峰は


「その点については確かにその通りね。もし、外にも世界があると断言できる存在が手引きしていたのだとすればそれをやったのは……」


星峰がそこまで言うと天之御はその口の前に手を出す。それ以上言わなくていいよと暗示しているように見える動作だ。その動作の裏付けなのか、他の面々も揃って首を縦に振っている。


「……そうね、考えるまでもないわね」


そういうと星峰はデータの調査を再開する。するとここで生み出された生命が外の街で自分達の世界と変わらぬ暮らしを送っていた事、その日々は本来平穏であった事。

その平穏が突然壊された事等の事実が次々と判明していく。それを見ていく度、一同は星峰の仮説が正しい可能性がある事、そしてそれが事実であった場合の怒りを内心に積み重ねていくのであった。

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