第398話 那智町捜索開始
「感謝するよ、何かあったら直ぐに連絡して。くれぐれも先走った行動はしない様にね」
天之御がそう言うと一行は部屋の外に出て行き、司令室には魔神族だけが残る。そして天之御達が出払ったのを確認するとその魔神族は
「八咫君……君が決着を早く着けられるように私も協力するからね。だから……」
とその応援するような口振りとは裏腹に心配そうな小声を零す。一方で部屋の外に出た天之御達は基地の外に向かって歩いていた。その最中ふと
「所で、この街はどういう街なの?いきなり来たからどういう街なのか良く分からないんだけど……」
と涙名が話す。するとそれに反応した天之御が
「そうだったね、この街について説明がまだだった。この街は~」
と言いかけるとそれに割って入る形で八咫が
「南大陸の中でも文明の発展と街の規模が首都キャベルに次いで長く、そして先代魔王殿下に対して古くから協力してきた街だ」
と話す。その声は普段と変わらない様に聞こえる、だが涙名はその話し方にどこか違和感を感じずにはいられなかった。涙名本人にも分からないがその声は普段と何かが違う、そういう風に聞こえたのだ。
「八咫……」
いきなり話に入って来た為か困惑する天之御、だが八咫は
「そして……俺の親族が統治している街でもある」
と告げる。それを聞き涙名は
「八咫の親族が統治してる?つまり、この街自体が天之御の協力者って事?」
と更に質問を重ねる。すると天之御は
「そう言う事。だからスムーズに話が進んだんだ。最も、内部にブントが侵入していないという確証は無いからある程度は慎重にならざるを得ないけどね」
と告げる。だが涙名の感じた疑問はそれだけではなく、別の疑問も感じていた。だが涙名は敢えてそれを口には出さなかった。
「で、怪しい所の検討はついているの?」
星峰が話を本題に戻そうとこう切り出す。すると八咫は
「否、規模が大きい上に此方への協力者が多い事で却って検討は付きにくい。ここは街中を草の根を分けて探していくしかない」
と何時も以上に深刻な顔を浮かべて答える。その表情に気付いたのか気付いていないのか分からないが星峰は
「そうなのね。なら手分けして虱潰しに探していきましょう」
と提案し、天之御も
「そうだね、それが一番手っ取り早いと思う」
と賛同する。そして一行は街中に散らばり、捜索を開始する。
街の北の方に向かった星峰はそこで周囲の建物とは明らかに大きさが違う屋敷を見つける。
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