第346話 迫る衝突

当然、その視線は示す先である星峯達も気付いていた。


「彼等が居るね……」


天之御がそう呟くと星峰は


「ええ、だけどここで退く訳にはいかない。お互いに退路はないのだから」


と強く迷わない声で返す。その声に触発されたのか涙名も


「うん。それにコンスタリオ小隊の傍に居るあの少女、彼女だよ。渦中の存在は」


とアンナースを指差しながら強い言葉を口にする。

双方の距離は徐々に詰まっていき、そして遂に互いの全身を明確に捉えられるまでに迫る。


「又……こうして会いまみえる事になるとはね」


先に口を開いたのはコンスタリオであった。それに対し


「驚かない所を見ると、如何やら私達がここに来ている事を少なくとも予測はしていたみたいね」


とおちょくっているのか真剣なのか分からない声で返したのは星峰であった。だがその軽い声とは裏腹に場の空気は寧ろ重みを増していく。


「ここを黙って通して」


空弧がそう告げるがその言葉を聞いたシレットは


「それを聞きいれるとでも思っているの?只でさえあんた達には借りがあるのに折角見つけた逆転のチャンスをここで不意にしてたまるものですか!!」


と怒りを混ぜた声で返す。その怒りは何時も以上に強く感じられた。空弧が使っているのがスターの体だというのもそれを強めているのだろう。


「!!貴方は……」


涙名の顔を見たアンナースは明らかに何かに気付いた顔を見せる。それを見たコンスタリオが


「どうしたの?あの魔人族に何か見覚えがあるの?」


と問いかけるとアンナースは


「い、いえ……以前戦った事がある位よ」


と返答するがその顔は明らかに焦りが混ざっていた。その内心では


「あの体……間違いなく彼だわ。だけど彼はブントの構成員且つ暗殺部隊だった筈……だとしたらブエルスが陥落した時に……」


と何か焦りの様な物を感じるのであった。


「通さないというのであれば、まかり通らせてもらうだけだよ!!」


天之御がそう告げると双方は戦闘態勢に入る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る