第224話 法皇の悪行
半ばその気迫と勢いに圧倒される形で涙名、星峰、天之御はみさきが指差した資料のページを覗き込む。そこに記述されていたのは
「本日、西大陸のエリア4Aを我々人族部隊の制圧下に置くことが出来た。しかしユダウェ様のお告げには何の意味があるのだろう?あのタウンは奪い取るのではなく焼き払えと……いや、ユダウェ様のお告げに疑問を持つのは厳禁だ。
きっと我等には想像も付かない理由があるに違いない」
と法皇自身の文字で綴られた文章だった。
「日付と内容から見てもこの記述があの襲撃の事を指しているのは間違いありません。そしてこのユダウェって……」
その勢いのままに岬がそう言いかけると天之御が
「魔神族の伝承に伝わる災いをもたらす神の名前だね」
と言葉を続ける。だがその言葉を聞いた星峰と涙名は驚いた表情を見せる。それに気付いた天之御が
「二人ともどうしたの?」
と問いかけると涙名が
「いや……僕達にはユダウェはこの世界の平定を司り、久遠の平穏を齎す神って教えられてきたから……」
とその表情の理由を説明する。
「何を言ってるの!?ユダウェは……」
岬が思わず大声を出しかけるが天之御はそれを制し
「落ち着きなよ岬。人族と魔神族の伝承が異なっているのはある意味当然だと思う。恐らくユダウェは人族には大人気の神様として祭り上げられているんだろう。その点を考えれば不可思議な反応ではないよ」
と岬に落ち着く様に促す。天之御に言われた事で一呼吸置くことが出来たのかその直後
「そうですね……御免なさい、又取り乱してしまったわね」
岬は自分の非を認め星峰と涙名に謝罪する。
「別に気にしていないよ。それに寧ろ、これでユダウェが本当に平定を齎す神なのか怪しくなってきたし、それに岬の故郷を襲撃するように指示していたのが法皇であったのなら、焼き払ったのはそこに人族にとって都合の悪い何かがあったからって事になる」
「その点が分かっただけでも私達が岬の故郷を取り返すのには十分な理由になるわ」
二人は岬の行動を全く気にする素振りは見せず、寧ろどこかで納得しているかの様にすら感じられる。それは岬の心境を慮った故なのか、それとも……
「それに法皇の悪行はそれだけじゃないよ。霊諍君の故郷を襲撃したのも法皇、つまり父だったんだ!!」
涙名の口から告げられた更なる事実に天之御も思わず
「それは本当なの!?」
と問い返す。だが涙名の回答は聞きなおすまでもなく
「うん。資料に書かれていたよ。ユダウェ様のお告げに従い今後の作戦行動に有益となるあの森を制圧しろと命じたと」
とそれが事実である事を更に強調するものであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます