第195話 ワンカーポの行方
そして勢い付いた一同はそれぞれの得意技を駆使し、その場に居るブント部隊を掃討していく。その勢いはその場だけなく、別方向から攻める兵士部隊、更には他の場所で防戦を展開していた部隊にも届いたのか戦局の流れは完全に魔神族に傾く。一方、司令官を失ったブントがそれを止められる筈も無く、その場に居た兵士の多くはなし崩し的に倒れ、頼みのフレアバスターも涙名が破壊していく。そうして僅か数分後にはワンカーポから出撃した部隊は完全に瓦解し、魔神族の勝利が確定していた。
「これで、ワンカーポの脅威はひとまず取り払われたね」
天之御はそういうと安堵の表情を浮かべる。余程幸いだったのだろう。そこに豊雲が
「大陸内の他の街での防衛戦も全て此方の勝利で終わりました。どうやらあちらの部隊も全てイェニーの指揮で動いていたらしく、それが無くなった途端に瓦解していったという事です」
と他の街も無事であるという報告を送り、天之御の安堵は更に深まる。
「さあ、皆戻ろうか。まだまだやる事は山積みだけど」
天之御が満面の笑顔でそう告げるとその場に居た面々は全員首を縦に振り、天之御
に釣られたのか揃って笑顔になる。勿論本人も言っている様にこれで全てが終わったわけではなく、寧ろ事後処理や調査は山の様に積もっている。だが今この場でそれを口に出す者は誰も居なかった。今、この瞬間だけはこの笑顔を消したくなかったからだ。そして天之御の転移妖術で一行はブエルスへと戻っていく。
「さて、早速兵士達に乗り込んでもらってワンカーポ内部の調査を進めているよ」
ブエルスへ帰還し、謁見の間に着いた直後の天之御の言葉だ。その言葉と顔からは買って兜の尾を締める様子が感じられる。それを受け取ったのか星峰も
「叩けば埃が山ほど出てきそうですね、いえ、埃というより毒素が大量に出てきそうな気もしますが」
と冗談を絡めつつも的を得た発言をする。
「ですがこれで人族も大きく動かざるを得なくなりますね。何しろブエルスに続き、又首都が陥落したのですから。当然、今後は人族部隊の動きもシビアになってくるでしょう」
涙名の発言はかつて外交にも関わっていた立場もあり、それ故の冷静さがあった。それをうけて天之御は
「うん。恐らく近いうちに人族部隊は大規模な再編を行うだろうね」
とそれを肯定する。
「……今回、イェニーはキャベル、それも恐らくはコンスタリオ小隊に増援を要請するつもりだった。今後コンスタリオ小隊がどうなるのか……そこが一番の不安だよ」
再編という言葉が残ったのか、何処か不安げな声で涙名が語る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます