第80話 嘗ての同志 今の敵

その先に居たのは紛れもない、スターだったからだ。その周りには八咫や岬、星峰もいる。


「スター・・・いえ、あれはもうスターじゃない!!その体を奪ってなり替わった敵!!」


シレットはそう叫び、歯にぐっと力を入れる。目の前に居たら今にも噛み付きそうな勢いで。そしてその言葉は怒りを表している様にも、自身に言い聞かせている様にも見える。


「シレット、焦っては駄目よ。例え・・・」

「分かっていますよ。だからこそ確実にあいつを!!」


コンスタリオはシレットに対し諭す様に言うがシレットの返答は聞いているのかいないのか分からない。激しくなりそうな心を必死で抑えているのが分かる故、コンスタリオもこれ以上強く出れない。そんな二人を見てモイスも


「俺も・・・フォローしたいが、出来るのか、この状況で・・・」


と自身も流されそうな空気の中、何とか理性を保とうとする。一方、星峰達も目の前にコンスタリオ小隊が居る光景に気付いていた。


「あの部隊は・・・以前見た事はあるが、星峰・・・」

「八咫の言いたい事は分かっているわ。ええ、あれは私の嘗ての仲間、コンスタリオ小隊よ」


以前雪山の戦闘時、スターだった頃の星峰と邂逅した八咫はコンスタリオ小隊の事を知っていた。そしてもう一人、スターと同じ記憶を持つ空弧も


「星峰・・・」


と不安そうな声を挙げる。当然だった、星峰の嘗ての仲間が敵としているのだから。


「魔神族に・・・いえ天之御に協力する事を決めた時からこうなる事は覚悟はしていたわ」


星峰はそう発言する。その声は周囲もそれが嘘偽りのない物であると思っていた。今の星峰であれば彼等に対しても刃を容赦なく向ける。そう確信させた。


「でも、手にかけたくはないのでしょう?」

「・・・出来れば・・・ね。」


岬のその発言に頷く星峰。だがその頷きも又、周囲は予測していた。故に空弧は


「ならやる事は一つ!!彼等を・・・」

「ええ、でもコンスタリオ小隊にとって、当然の事ながら私達は敵。だから倒す事を最優先にして。特に空弧、貴方は気を付けて。さっき向こうの会話を聞いたけどコンスタリオ小隊は貴方に激しい敵意を向けているわ!!」


シレット達の声が戦場に響いていた訳ではない。星峰は妖術を使ってコンスタリオ小隊の会話を聞いていたのだ。そしてそこから得た情報により、空弧に助言する。


「助言はありがたく受け取っておくわ。でも恨まれているのは覚悟の上よ!!」


空弧はそう言い切り、臨戦態勢を取る。そして兵士長と星峰が同時に


「総員、戦闘開始!!」


と告げ、魔神族部隊と人族部隊は開戦する。

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