第359話 見えないものは見抜けない
『敗北したからこそ繰り出せる策がある。』
夜が明けた頃、追撃してきた張劉連合軍は、彼方より、曹操軍の陣営を見ていた。
「ははははは!見てみろ!あの情けない陣容を!!」
劉表と張繍の二名は敵陣を指さし、声高々に笑い合った。
二人が笑うのも分かる。
五万の兵を失うという大敗を喫した曹操。それに加えて、難行苦行の逃亡劇とあらば、彼の元から逃げ出す者も大勢いると判断するのは妥当なことである。
この両大将の考えに、賈詡を含む幹部たちも同様の見解を下したので、両軍は野を真っ黒に、大兵を持って襲撃を開始した。
その進攻に対して曹操は、
「――――慌てるな。余裕たっぷり、カップラーメンを3分待つ気持ちで待ち構えるのだ。」
充分、侮らせておいて。
敵を目いっぱい近づけさせて。
風俗の待ち時間を連想させるように。
刻一刻、刻一刻とその時を待つ。
そして・・・その時は来た。
「今だーーーーッ!かかれーーーーッ!殺戮の嵐だーーーーッ!!」
大将の号令に合わせて、盆地より次々と兵が姿を現してゆく。
盆地に隠れていた兵たちの数は、全軍の八割。
眼に見えていた兵たちの数倍の数の兵たちが、地よりニョキニョキと湧いて出てくるその様は、連合軍に恐怖を与えるのに十分であった。
「テハハ!? これはしてやられました! 張繍様!急ぎ退却を!!」
賈詡の声はその場にいた誰よりも早く発せられたが、いかんせん、それは手遅れであった。
アリのように地の底よりゾロゾロと出てくる曹操軍は、敵の退路をあっという間に塞いだ。
そして連合軍を両側から挟み込み、二方向より圧縮していく。
「圧縮!圧縮!サンドイッチ!サンドイッチ!具材は人間でございま~~~す!!」
「復讐最高!ストレス解放!身も心も
「散って散られて散りまくれ!秋風繚乱!血身魍魎!見た目を化物に~~~してあげます!!」
血しぶきが上がる上がる。
血は秋風に舞い、所々に死骸の丘が出来た。
逃げて行く兵たちは要害だけに止まらず、近場の町まで逃げて行った。
「県城も燃き潰せ!一兵たりとも生かして帰すな!!」
今度は曹操軍が追撃を開始する番である。
今までの鬱憤を晴らすかの如く、兵たちはノリに乗って敵を追いかけ回していく。
次々に敵を打ち倒していき、連合軍が壊滅していく。
曹操、ついに復讐完了か!
と、思えたその時、またしても都より曹操の元に凶報が届いたのであった。
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