第263話 気づいた時にはいつも遅い
赤い馬に乗った偉丈夫を先頭に、一軍が夜の荒野を駆けている。
偉丈夫の顔は覚悟を決めた男の表情。
彼は徐州城の門下へと到着すると、
「開門っ!開門っ!!」
と、声を張り上げて叫んだ。
この突然の大声に、見張り兵たちは城門の楼より門下を覗きこんだ。
「何事っ!? 何事であるか!!」
「小沛で問題が発生した!至急、張将軍にお繋ぎ願いたい!」
「小沛で問題がっ!! ・・・わかりました!今、将軍にお繋ぎ致しますので、少々お待ちくだされ!!」
小沛の呂布が真夜中に城を訪れたとあって、見張りの兵たちは急いで張飛を呼びに向かった。
――――張飛の姿が見当たらない。
探せど探せど見つからない。
いるべき場所に彼がいない。
それもそのはずである。
酒を飲んで気分が良くなった彼は、お気に入りの場所である城郭の西園へ行って、そこで景色を眺めながら酔いつぶれてしまっていた。
そのため、いくら彼を探そうとも、兵たちは彼を見つけることが出来ずにいた。
「まいったなぁ・・・将軍は何処におられるのだろう?」
兵たちが困り果てていると、突然、城内より鬨の声が上がった。
曹豹が裏切りを始めたのである。
曹豹の手勢は、張飛探索のために手薄となった城門へと迫り、門を内部より開いた。
「開いたっ!今だ!!」
呂布の軍勢は雪崩のように城内へと侵攻した。
城内の兵たちの大半は、酒を飲んで酔いつぶれている。
足元がおぼつかない彼らを殺すなど、赤子の手を捻るようなモノ。
グササササササササッ!!
と、彼らはたちまちのうちに切り刻まれた。
血の臭いが蔓延し、剣と矛の金切り音が辺りに響く。
鬨の声と金切り音は張飛のいる西園にも届いた。
「やっ!? この音は!!」
彼はようやく目を覚ました。
「しまった!!」
愕然と立ち上がり、彼は城内へと駆けだした。が、時すでに遅し。
城内は混乱の渦であった。
恐怖と痛みの声を上げているのは徐州兵。
城内を逃げ回っているのは徐州兵。
地面に転がる死体は徐州兵。
自らの血で体を朱く染めている者たちは、皆、徐州兵であった。
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