第118話 嫌なら嫌と言おう

 兵が民を襲い略奪する←NG

 国が国を襲い略奪する←OK


 これが乱世である。

 民間人が直接的に傷つかなければOKという考えは、現代の戦争でも当てはまることではないだろうか。


 逢紀の提案した策はまさにこれであった。


 『民間人が駄目なら国ごと略奪すればいいじゃない!!』


 という策を実行するため、袁紹は公孫瓚と韓馥の両名に手紙を出すのであった。



 北平の公孫瓚陣営にて。

 公孫瓚は広間にて家臣たちと袁紹からの手紙について議論していた。


「袁紹から手紙が来たぞ。」


「袁紹殿から?何と書かれていたのですかな?」


「『冀州良いとこ、豊かな所!一緒に攻めよう、奪い取ろう!土地を山分け、万々歳!!』と書かれているのだが・・・何か胡散臭いな。」


「・・・胡散臭いですねぇ~。ですが、手紙に書かれている通り、冀州は土地が肥えており、豊かな地であることは間違いありません。手紙の内容が真であれば、共闘するのは得策かと。」


「だよな~。・・・胡散臭い。非常に胡散臭い。が、私としても冀州は欲しい。よって、この手紙の内容を真として袁紹殿と共闘しようと思う。・・・異論はあるか?」


「なかで~す!!」


「よし!では出陣だ!!」


 こうして公孫瓚は軍を率いて、冀州へと向かったのであった。



 一方こちらは冀州の韓馥陣営にて。

 韓馥は広間にて家臣たちと袁紹からの手紙に着いて議論していた。


「袁紹殿から手紙が来たべ。」


「袁紹殿から?何と書かれていたのですかな?」


「『公孫瓚が挙兵した!貴国に大軍をもって攻めてくる!このままでは貴国はピンチ、大ピンチ!何とかせんといかんですな~。』と書かれておる。」


「えっ!? 公孫瓚が攻めてくるですと!そりゃあ一大事ではないですか!!」


 韓馥の読み上げた手紙にて、韓馥陣営は色めき立った。

 動揺する家臣を静めようと韓馥は手紙の続きを読み上げる。


「落ち着け皆の者!手紙にはまだ続きがある!え~と・・・『このままでは貴国はお終い、もうお終い!だから私が貴国に力を貸そう!一緒に奴を退けよう!それが得策、ベストな策!協力しよう、そうしよう!』と書かれておる。」


「え、袁紹殿が力を貸してくれると?」


「うむ。手紙にはそう書かれておるな。・・・袁紹殿は18ヶ国が集まった連合軍の総大将を務めた人物。また、彼は名門中の名門の生まれであるな。・・・皆はどう思う?」


 臆病者の韓馥は直接的な言葉は発さずに、遠まわしに家臣たちに同意を求めた。

 すると・・・


「私は賛成ですな。我が国の兵力だけでは公孫瓚の兵と戦えません。協力すべきです。」


「私も賛成です。袁紹殿に力を借りましょう。」


 と、ちらほらと賛成意見が聞こえてきた。

 このまま、「袁紹と協力関係を結ぼうか。」という流れになりそうなその時、1人の家臣が手を上げた。


「私は反対です!この耿武こうぶ!絶対に反対です!!」


 手を上げた人物は長史ちょうしの耿武であった。

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