第93話 虎牢関の戦い その一

「・・・来たな。」


 呂布は陣頭にて、彼方より近づいて来る数万の兵を見て呟いた。


 敵兵の姿を確認した呂布は自兵たちに指示を飛ばし、弓を構えさせた。

 そして自身は方天画戟を引っ提げて、赤兎馬へと騎乗した。


 最強の男が最高の馬にまたがる姿。


 その容姿を遠目より見た連合軍の兵たちは「あれが呂布か。」と、目を見張るばかりであった。



「全軍突撃ーーーー!!」


 連合軍の先鋒である河内こうだい太守、『王匡おうきょう』の掛け声とともに戦いの幕が切って落とされた。


 叫び声を上げ、太鼓を鳴らしながら勇猛果敢に近づいてくる王匡軍に動じることなく、呂布は弓を構える兵たちに指示を出す。


「まだだ・・・心を静かに保て・・・もっと敵を近づけるのだ。」


 呂布は冷静沈着であった。

 焦れる自兵を制し、的確な指示を下していた。

 そして、敵が百歩前まで近づくその時を見計らい、呂布は射撃命令を下した。


「よし!矢を放て!!」


 その絶妙なタイミングにより放たれた矢は王匡軍の兵を射抜き、王匡軍の勢いを少しばかり削いだ。

 その時を逃すことなく呂布は号令を下した。


「よし!つっこめ!奴らを皆殺にするぞ!」


 呂布は赤兎馬の腹を蹴り、王匡軍の向かい勇猛果敢に突入していった。


 馬上にて振り回す方天画戟は王匡軍の兵を吹き飛ばし、頭、首、肩、腕、胸、背中、腹、尻、股間、大腿骨、太腿、脹脛、足首、踵、爪先まで全てを斬り裂いた。


「うわっははははは!!口ほどにもない腑抜けどもめ!!てめえらに俺を討てるものかっ!!」


 豪語しながら戦場を駆ける呂布。

 その語りに偽りなし。

 群がる兵をなぎ倒し、血の雨降らせるその姿。

 まさに最強。まさに鬼神。まさに武神。

 呂布は飛将軍の名に恥じぬ活躍を見せつけるのであった。


 方天画戟を縦横無尽に振り回す呂布に1人の武将が近づいた。

 近づく武将は王匡の部下の方悦ほうえつであった。


「呂布!いざ尋常に勝負!!」


「ほう・・・おもしろい!かかってこい!!」


 呂布は方悦の一騎打ちに応じることにした。


 方悦の槍が呂布に迫る。

 その槍を呂布は弾き、方天画戟で一閃。

 方悦は呂布と2合も討ち合うことなく、切り捨てられた。


「・・・つまらん。( ゜д゜)、ペッ」


 方悦の弱さに呆れて唾を吐き、周囲を見渡す天下無双。

 そして、方悦の上司である王匡を視界に入れるや否や、ニヤリと笑みを浮かべて一直線に突撃していった。


「危な~~~い!王匡様!危な~~~い!」


 主君を護るために呂布に立ち向かう王匡の兵たち。

 しかし彼らは返り討ちに合い、血を流してバタバタと地に倒れて行った。


「はいはい、いつものパターンです。・・・ガクッ。」


 そう言って討ち死にする兵たちを見て、王匡は顔を真っ青にして、自陣を捨て味方の陣へとスタコラサッサと逃げ出していった。

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