第3話 衝撃の邂逅!義妹は男嫌い!?
「ちょっと!どうして長政がいるのよ、しかも裸で!」
「そんなもん俺が知りたいわ!」
信長さんが知っている長政ということは、恐らくこの全裸の美女は浅井長政だろう。
これ、起きたら大変なことになるんじゃ無かろう…か……。
視線を彷徨わせると、目があってしまった。俺の目の前にいる、全裸の長政と呼ばれた美女と。
「お、おはようございます」
「……い」
「い?」
「いやぁぁぁぁ!お、おと、男がなんでこんなところにぃ!?」
絶叫の後、全力で後ずさる長政さん。色々隠して欲しい、小ぶりだけどきれいな形の胸とか、なかなか美しいラインのお尻とかが見えそうで色々ヤバい。
「いや、ここ俺の家なんだけど」
「そ、そんな……お義姉さまの香りを辿って来たのに……」
なんかヤバいことを言ってるけど、とりあえず聞かなかったことにしよう。
「信長さんなら、ほら後ろに」
俺が後ろの信長さんに指を指すと、長政さんは振り返りった。と、同時に。
「お義姉さまぁぁぁぁぁ!」
という発声とともに、華麗なルパンダイブを繰り出した。……ホントに目の毒だからやめてほしい。
「はしたないからやめなさい」
長政さんのルパンダイブを半身でかわしながら、信長さんは長政さんの頭にチョップを入れた。
「ぐえっ!?」
いや、今、女性が出したら絶対ダメな声が聞こえたんだが。
さて、そろそろ起き上が……れないな、ヤバい今起きたら完全に俺のバベルがスタンドアップしてるのがバレる……それは非常にまずい。
「先に下降りててもらっていいか?」
「どうしたの亮輔?」
「いや、長政さんの服を選んであげて欲しいんだ、俺が選ぶより絶対喜ぶだろ?」
「まあ、そうだろうけど……」
「それに、俺も着替えたいしさ。俺の裸見たいって言うなら別に良いけど」
「結構よ!ほら、長政行くわよ」
と言いつつ、長政さんを引きずる様にして信長さんは下に降りていった。
そのあと5分くらいで平常心に戻った俺は着替えると1階に向かった。
***
下に降りると香菜が大層不機嫌な顔で仁王立ちしていた(実際は浮いているのだが)。
「りょーちゃんはなんで私の居ないところで女の子と知り合ってるのかな」
どうやら、朝起きたら長政さんが増えていたことに怒っているようだ。香菜の性格的にヤンデレになりそうで些か心配だ。
「俺にもさっぱりだ、起きたらいつの間にか部屋にいたんだから」
全裸でベッドの中に潜り込んでいたのは黙っておこう、呪い殺されでもしたら大変だ。
「むう~」
何か言いたげだが、事実を言っているのでスルーしてリビングに向かうことにした。
リビングでは、信長さんとちゃんと服を着た長政さんがソファに座って話していた。
長政さんは黒のチノパン?と言うのだろうかそれと白いオフショルダーのブラウスだった、彼女の肩に届くくらいのセミロングの青髪とマッチしていて、凄く良いと思った。
ちなみに、信長さんは昨日の俺が選んだ服からカーディガンを除いたスタイルだった。
「おー、凄く似合ってるな」
素直な感想が思わず口をついて出た、すると感想を言っただけなのに長政さんにキッと、睨まれてしまった。
「長政、そういう態度はやめなさい」
長政さんの俺に対する態度を見かねた信長さんが、長政さんに対して注意した。
「ですが、お義姉さま……」
「彼は私の恩人なのよ?彼に対する無礼や侮辱は、私に対するものと同じと思いなさい」
そう言われて、何か思うところがあったのか、長政さんはいいかけた言葉を飲み込んだ。
そして、俺の方に向き直ると、頭を下げた。
「いや、謝ったりは良いよ…なんか理由があるんだろ?」
「えぇ…」
そういって長政さんは、かなり言いづらそうに口を開いた。
***
裕福ではありませんでしたが父も母もとても私を可愛がってくれました。
でも、私が元服を控えた頃に、そんな楽しかった日々は終わりを迎えてしまったんです。
父に薬屋にお使いを頼まれて家を離れた時、その界隈を根城にしていたごろつき達が、家に入り込んで荒らし回り、父と母を殺害していったんです。
帰ってきた私が見たのは、無惨に荒らされた我が家と、既に冷たくなった父と母の遺体……私はそれを見て酷く絶望しました。
そして、心の底から沸々と両親を殺したごろつき達、そしてその頭目・又右衛門への怒りが沸き上がってきたんです。
もっとも、その頃にはごろつき達は村から姿を眩まし、別の村に移ってしまっていました。
私は父が大事にしていた太刀……『大正義』を携え、ごろつき達に復讐するため、各地を転々としました。
それから暫くしたある日、私は父と母を殺したごろつき達と対峙することになりました。
あれは尾張の外れの方に差し掛かったころだったと思います。村小さな村の路地裏に仇のごろつきがたむろしていたんです。
仇の顔を見て、怒りに支配された私は、なりふり構わずごろつき達に斬りかかりました。
でも、体格の差更には数の不利で私は、すぐに返り討ちにあい、組み敷かれてしまいました。
衣服を裂かれ、体を弄ばれた私は、自分の中にあった怒りの感情が全て恐怖に変わるのを感じました。その時にあまりの恐怖に失禁してしまったのを覚えています。
この男達に初めてを散らされるのであろう、そう感じた次の瞬間でした。私を押さえ付けていた男の一人が何らかの衝撃で吹き飛びました。それは、銃の射撃による衝撃でした。いきりたった男達はその銃の音のした方向に向かって走りました。
しかし、あるものは斬り倒され、またあるものはその場に叩き伏せられ、ものの数分でごろつき達は全滅しました。
何が起きたのか分からず呆然としていた私は、路地の入り口に立つ一つの影に気が付きました。
「あ……」
その影がこちらに近付いて来るのがわかった私は、小さな声を上げ、露出してしまった肌を隠すとその影を見つめました。
「大丈夫?」
その影は優しい声音で私に語りかけ、手を差し伸べてくれました。
それが、お義姉さまとの出会いでした。
でも、このときに負った心の傷は深く、男性を嫌うようになったのはこの頃からでした。
そのあと、お義姉さまの下で力を付けた私は、その剣の腕を認められて近江の大名になりました。その時に、お義姉さまが妹のお市を私の妻にしよう、そう言って同盟を結んでくれました。恐らく、お義姉さまなりの気遣いだったのでしょう。
そして、私はその気遣いに報いるため私の命が尽きるまで、お義姉さまの危機にはすぐ駆け付けるようになりました。
***
「なるほどな……」
一通りの話を聞き終えた俺は、かける言葉を 見付けられないでいた。
「別に同情が欲しいわけではありません、ただお義姉さまの恩人ということなので一応話しただけです」
話し出す前と変わらない辛辣な態度で俺に接してくる長政さん。……でも、それも仕方のないことなのだろう。長政さんと本当の意味で仲良くなれる日など来るのだろうか、そう考えた直後だった。くぅぅ~という可愛らしい音がした。俺の腹ではない、信長さんの方からしたわけでもない、となると……。
「っ~~~」
真っ赤な顔で、長政さんが睨んできた。間違いない、今の音は長政さんのお腹がなった音だ。しっかり可愛らしいところも有るんだな……と考えてる場合じゃない、視線だけで殺されそうだ。
「じゃあ飯作るから、ちょっと待っててくれ」
俺は、平日じゃなくて良かった……と思いながら台所に向かった。
昨日までとは違って3人に増えた食卓に、俺は少し嬉しさを覚えていた。
昔、両親と囲んでいた食卓を美女……それも戦国武将と囲んでいるってのは考えたこともなかったけど。
手早くサラダを作り、トーストを焼いて冷蔵庫の中からジャムを……いや、ジャムは切らしていたはずだからバターを取りだし塗る。
そして皿に盛り付けて、カップにインスタントのコンソメスープを注ぐ。
両親が亡くなってから毎日のように繰り返してきたことだから、それほど億劫にも感じない。
けど、自分以外の誰かに作るのは案外楽しいもので、新しく料理という趣味に目覚めそうだ。
「はい、できたっと」
「ありがとう、亮輔」
「……」
「いやなら食べなくても良いけど、俺としては食べて欲しいかな、長政さんに死んで欲しくないし」
「……いただきます」
そう言って長政さんはパンを少しかじった。……と思ったら瞬く間に食べ終わった。よほどお腹が空いていたのか、何かの意地なのかわからないけど本当に早かった。
あ、すごい良い笑顔、やっぱりお腹空いてたんだな。
……ん?俺の手元……いやパンを見てる。
口元に運ぶ……パンを見る目が切なそうになる、戻す……喜ぶ。あまりに可愛らしいので何度か繰り返した。
「俺焼いてくるから食べて良いよ」
そう言って俺はキッチンにパンを焼きに戻った。
★★★
全く、あの男は何を考えているのかわからない。
なんの気負いもなく、死んで欲しくないなど……まるで、求婚されているみたいじゃない……。
この男なら大丈夫だと思っている私がいるのは何故……?
お義姉さまが気を許しているから……?それとも……。
そこまで考えて私は、あることに気が付いた。
「(思考の半分以上があの男で支配されている!?)」
このままではいけないと思い、私は無心でパンにかじりついた。
***
朝飯を食べ終わった俺たちは、心地良い満腹感に身を任せてリビングでだらだらしていた。何故だか、長政さんが忙しなくキョロキョロしている。
「あの……お手洗いは……?」
さっきからやたらとそわそわしてると思ったらそう言うことだったのか。
「香菜ー、長政さんにトイレ教えてやってくれー」
「はーい」
香菜に長政さんのことを任せて俺は信長さんの方に向き直った。
「流石にお袋の部屋の服だけじゃあれだろうし午後にでも買いに行く?」
「そうね、少しお礼もしないといけないしね」
「お礼……?なんの?」
俺は本当に心当たりがないので大分思案してしまった。
「助けてくれたでしょ?そのお礼よ」
「いや、別にお礼が欲しくて助けたわけじゃ…」
「良いの、私がしたいだけなんだから」
「さいですか」
こうして今日の午後は信長さんと長政さん(と香菜)を連れて町に出掛けることになった。
若干身の危険を感じたのは内緒だ。
その頃、長政さんは、
「あっ、やっ、えぇ!?」
ウォシュレットに悶絶しているようだった。
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