言い争う男女の話
「私、あなたが嫌いです。私の為と言うクセして、ぜんぶあなたの為じゃないですか」
「何も悪くはないはずだ。僕が得をして、君はわずかな幸福を享受する。植物が光合成で生み出した酸素を人間が吸って生きているように」
「あなたは、人の情けがどういうものか分かっていないのです。損得で数えるような次元の話じゃないはずよ」
「損得で数えなくては、有限の人生を生きられない。損ばかりをして生きていくのはもう御免だ」
「かぞえることが無意味なたった一回の人生だからこそ、かぞえることのできない独自の幸福を求めることこそ最善。数に縛られている人間はロクなものじゃないと薄々気付いているくせに」
「それでも、失うばかりでは埒もあかない。利をとるのが合理的で最善の人生なんだ。屁理屈を並べ立てられて曲げるようならこんな生き方はしてこなかった」
「見損なったわ。私の飲み物代は置いていくから好きにしてちょうだい」
「ああ。もう話がないのなら、ここに残る義理もない。勘定は自分で済ます。さっさと去ってくれ」
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