第21話

綾乃サンたちが卒業して、特に変わったこともなく、時々拓真と過ごしたり、ひぃちゃんたちと遊んだりしてゆるやかに春休みが終わって、私たちは三年生になった。部活のない休みというものが、これほど退屈でのどかなモラトリアムだということを、中学から部活に明け暮れていた私は初めて知った。

先生方も気を使ってくれたのか、はたまたそれほど人数が多くないから偶然なのか、部のコは同じクラスにはいなかった。ただ担任が見張りのように田山先生がついた。拓真とは、未来の選択肢の違いか、もしくは先生方が困ったのか、隣のクラスになった。

もともとクラス替えによく言われるリーダーシップや優等生、問題児にピアノ演奏、どれもできてしまう自分は、クラスによって役割を変えられる便利屋でもあるし、厄介者でもあるのだ。

同じクラスには美湖がいるし、1年の時の知り合いも何人かいるから、安心はできる。拓真自身も、友人の少ない拓真は、隣のクラスで、祐輔君と同じクラスだ。

「つぐな。今年もよろしくね。」

「こっちこそ、美湖。」

今年のクラスは、正直、引っ張るやつが配置されていない。神輿になりうるのは何体かいるが、なまじ頭の働く担ぎづらい神輿なのが腹が立つ。

私が沈み切らず、浮かびきらない居場所を探さなければ。

そうならなければ、私はまた、一人になる。

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