どーでもいい知識その② コショウは薬
「この世の全ては〈
「『ある』って思わせれば、本当は『ない』ものを実体化させることまで出来るもんね」
実際に〈ロプノール〉の詰まった超空間は、「ある」と言う嘘を〈
他方、〈
仮に一攫千金を目論み、紙幣を実体化させたとしても
無論、人間の住む超空間がそう易々と消えていたら、命が幾つあっても足りない。不安定な超空間を維持するため、〈ロプノール〉の地下には地上の町より広大な施設が設置されている。
「ただ、〈
「完成度の高い嘘を作るには、すっごく時間が掛かるんだよね?」
「はい。お水を飲みたいなら、井戸を掘ったほうが早いです」
〈
「この欠点を補うために開発されたのが、〈
シロはカラーボックスに目を
〈
機能に
「〈
タニアは挙手し、前々から気になっていた疑問を投げ掛けてみる。
「いえ、〈
「そっか、人間は〈
改めて口に出すと、タニアは不思議で仕方なくなってしまう。
その存在さえ知らない人間とは違って、〈
一方で〈
カミサマと対話出来る〈
――と言いたいところだが、実のところ、人間以外の全生物は〈
例外的に頭がよくなるように作った〈
「人間さんにも〈
残念そうに微笑み、シロは平らな胸に手を当てる。
人間を含む全ての生物は、「生きていると言う証明」――〈
〈
この「生きている」と訴える声を、〈
〈
その理由となっているのが、〈
余談だが、「音波」である普通の声と同様に、〈
「波」の正体は「生きている」と言う訴えを受けることによって、〈
〈
現実に存在する波を錯覚させる方式は、「ない」波を「ある」ことにするより簡単だ。嘘を作る時間が短いのは
利点の多いこの方式は、水面を発生させる以外にも幅広く採用されている。有名なのは超音波に誤認させた「波」で物質を高速振動させ、加熱することだろうか。他にも空気の波に偽装し、風を起こすと言う使い方もある。
「人間たちは〈
「う~ん、どうですかねえ」
シロは返答を保留し、難しい顔をする。
「大変なのは間違いないです。航海には年単位の時間が掛かりますし、生きて帰れる保証もない。おいしいかき氷が食べたくなったからって、日帰りで北極に行くわけにはいきません。私たちが一〇〇イェンで買ってるコショウも、人間さんたちは宝石みたいに扱ってます。片道二年とか掛けて、原産地のインドまで航海しなきゃいけないからです」
「この間、シロが教えてくれたっけ」
コショウの価値が高騰した背景には、供給の大変さもさることながら、需要の多さも大きく関係している。
ただ焼いただけの肉より、香辛料で味付けした料理のほうがおいしいのは言うまでもない。また臭いが病気を運ぶと信じる西洋人は、臭みを消すそれを薬としても珍重している。東洋でも
実際、コショウに含まれるピペリンには、下痢や腹痛を改善する働きがあると言われる。更には抗菌や防虫にも効果があり、食料の保存にも役立つ。長期間の航海には欠かせない防腐剤で、コショウを求めてインドに向かう船が増えたことも、マッチポンプ的にその価格を暴騰させた。
「ただほとんどの人間さんは、そもそも日帰りで大陸間を移動する方法があるなんて知りません。自分だけ目が見えないとか、歩けないとかじゃない。旅は大変なのが当たり前なんです。私たちは鳥さんを知ってるから、空を飛べたら便利なのに、とか思える。けど最初から飛ぶ生き物がいなかったら、空を飛べるなんて考えもしませんよね?」
「〈
「はい。それに人間さんの向上心ってパねぇんです。本当に不便だと思ったら、努力と工夫で何とかしちゃいます。きっといつかは空を飛ぶ道具も作っちゃいますよ、〈
「でもさ、〈
世界を司るのがたかが電卓だと知っていた〈
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