デカダンス

 この作品は2020年夏クールで一番面白いオリジナルアニメ作品です。だからこそ、こんな序盤で語りとうなかった。もっと話が盛り上がった9月の頭くらいで紹介したかった。

 とは言え、敬遠している人に良さを伝えるには序盤で紹介した方がいいんだよね。むむむ。では仕方ないか……。逆に、序盤で紹介出来て良かったと思うべきなのかも知れません。ポジティブシンキング!


 話の内容はですね、近未来SFになります。人類が謎の化け物に襲われて数をむっちゃ減らした世界が舞台。生き残った僅かな人類は巨大移動要塞デカダンスに住み、いつ終わるとも知れない化け物との戦いに身を投じている。そこに幼い頃化け物に襲われて死にかけた少女が職場の組長に導かれて世界の真実を知る戦いに身を投じていく――と言った感じのあらすじになっています。

 でもこのあらすじじゃ、デカダンスの魅力を1割くらいしか紹介出来ていないんですよね……。


 詳しく語るとネタバレになってしまうのですけど、この話は2層構造になっているんですよ。簡単に言うと本当の世界と、偽りの世界。当然そう言う作品の場合、表向きに見える世界が偽りの世界に相当するのがお約束です。

 面白いのは、本当の世界と偽りの世界でキャラデザがまるっきり違うところ。ここまで別のキャラデザなのに声と性格が一緒と言うだけで同じキャラに見えるの、面白い発見でした。


 SFらしいギミックも満載なのですけど、この作品の一番の特徴はその演出とテンポの良さなのです。これはどう言う事なのかなと思ったらすぐにその謎が明かされていきます。世界の重要な秘密ですら2話であっさりとネタバレするのですからすごい。普通の1クール作品なら8話以降で明かすような展開をですよ。この出し惜しみしない演出がすごく小気味良いです。それでもまだ謎だらけなのですけどね。

 新鮮に驚いて欲しいので、ネタバレが書けないのが心苦しいです。本当は色々と語りたいのですけどね。


 この物語、演出もそうですけど、作画クオリティもすごいです。PVを見てもらうと分かりやすいのですが、立体機動的なアクションシーンがバトルで展開されるんですよ。目まぐるしいカメラワークがテレビアニメのクオリティを超えています。映画の大きなスクリーンで観たい、大画面に耐えられるクオリティなんです。

 このアニメに関わっているスタッフは幼女戦記のスタッフなのですよね。なるほど納得と言う感じです。


 後、タイトルにもなっているデカダンス。巨大要塞でありながら巨大兵器にもなっていて、敵の超巨大タイプにはデカダンス自体が戦闘を担当します。この重厚なバトルシーンも見応えがありました。こちらのシーンもテレビアニメのクオリティじゃないです。お金払って見ないと失礼に感じてしまうやつ……。


 義手の少女のナツメは表情もアクションも豊かで見ていて飽きません。実は主人公はこの少女の上司のカブラギっておっさんなんですよね。有能な師匠タイプのキャラは作品の途中で死んじゃう事も多いのですけど、主人公なので最後まで健在でしょう。そこは安心しました。いいキャラですので。


 脚本や演出の良さの理由ですけど、一度脚本が出来上がった後で更にブラッシュアップしているからのようです。そこで矛盾点を潰して伏線を仕込み直しているみたいですね。これはこの先の展開も期待出来そうだなぁ。

 テーマ的にはSF作品らしいルールに縛られた世界から自由を取り戻す的なアレですけど、そう言う王道なのもいいですよね。ギミックや設定が複雑な分、テーマは王道で丁度いい感じです。


 序盤の展開が完璧なため、心配になるのはこのクオリティが最後まで維持出来るのかどうかと言う事。ちゃんと最後まで面白かったら2020年を代表する作品になりえると思います。そうなって欲しいなぁ。どうか途中で失速しませんように(汗)。

 とにかく、私の今期イチオシ作品です。SFでアクションが好きな人に特にオススメですよっ!

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