ズートピア

 今この話題を出すのは今更感が半端ないですが、話題のズートピア、地元の劇場の上映が終わる前にギリギリで観てきましたよ。いやぁ、話題になっていただけあってとても素晴らしかったです。


 見ていない人に簡単に説明するとズートピアは動物を擬人化したキャラクターが活躍するディズニーの3Dアニメ映画です。特徴的なタイトルは動物園のズーとニュートピアを合わせた造語で、つまり動物達の楽園と言ったところですね。その動物達の楽園で繰り広げられる物語がズートピアなんです。


 ズートピアの世界では肉食動物と草食動物は仲良く暮らしています。楽園ですからね、ええ。ここらへん、聖書の思想がベースになっているのかなという気がしました。聖書の楽園の描写がそんな感じなので。アメリカ人の考える楽園のイメージがそう言うイメージで刷り込まれているのかな?


 でも擬人化は何かを例える時によく使われる手段でもあります。この作品の場合は性差問題と人種問題。アメリカ発の物語らしいですよね。テーマとしては同じ人間同士、彼らがそうだと言うだけで差別はいけないよと言う事を間接的に言いたいのでしょう。子供向けだし普遍的なテーマだしいいと思います。


 様々な動物が別け隔てなく暮らすズートピアですが、草食と肉食に全く壁がない訳ではありませんでした。完璧な平等社会を作ったはずのズートピアでもその差別は残っています。そこで主人公達が登場するんですね。


 ここから詳しく書くと内容ネタバレになるので出来るだけ控えて書きますけど、この映画、様々な平等思想をこれでもかと盛り込んで来ます。

 でもそれが全然説教臭くはないんですよね。本当にうまく出来ていると思います。この世界での常識はこうだから無理と言う要求を、努力と勇気と機転でことごとく打ち破っていく姿は流石物語の主人公と言えます。


 もちろん全てうまくいく展開では話が素直すぎてちょっと面白くありません。そこもしっかり考慮されていて、途中で主人公は無力感に苛まれて地元に引きこもってしまいます。そこでの経験でまた復活するのもまたある意味お約束ですね。


 この作品はとにかく動物達が可愛いんです。そして世界観もしっかり練り込まれている。事件を推理する知的要素もあるし、悪を追い詰めるアクション要素もあるし、どんでん返しの要素もあるし、おまけに恋愛要素まで……。

 言いたいテーマも過不足なく素直に観客に伝わる仕組みはまるで上質な絵本を読んでいるようでした。描写された軽い恋愛要素も妄想好きな方々に人気のようですしね。盛り込める要素はみんな盛り込む、流石ディズニー作品です。


 物語のキモのどんでん返し部分、私はすぐに分かってしまいましたが、まだあまり物語に触れていない本来のターゲットであるお子様には結構ショッキングな展開だったのではないでしょうか?出来れば私もあの展開に素直に驚けるピュアな部分を持っていたかったです。汚れちまったぜ――いつの間にか――。


 そんな訳でオススメです――と言っても、もう上映は終わっていますよね。もし見ていない人がいましたら、パッケージ化された時に是非見て欲しいと思います。良質な作品は時間を贅沢にしてくれますね。

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