第二十夜 夏去りし不知火に君想フ

「……神代の時代、高天原と黄泉の間にあるこの地の事を、葦原中國あしはらのなかつくにと呼んだ。古事記の初めには、最初の神が生まれる様子を『葦の芽が出るように』と表している」


「乙子さん、突然どうしたんですか。そんな話をして」


「ポッと思い出したんだ。そういえば、翁の面が言っていたのを聞いたことがあるな……と。『葦を分けてナントカ……』という感じの、どこかで聞いたことのある短歌だと思うんだがね、照朱郎」


「『港入りの、葦わけ小舟、障り多み、我が思ふ君に、逢はぬころかも』万葉集の短歌じゃないかい? 」


「ああ、そんな感じのやつだった」


「雪ちゃん、その歌、どういう意味? 」


「『小舟を港へ入れようにも葦の茂みが邪魔するように、にっちもさっちも君に会いに行けないよ』、っていう感じかねェ」


「会いたくて会いたくて、でも会えなくてぇ~ってわけ? いつの世もオンナジような文句が流行るんだね」


「昔の人の悩みもそう変わらんのだろ。この世が常世になりでもしない限りはサ」

「オバケ代表の雪ちゃんがそれ言う? 」


「人間は紀元前から『最近の若者は』って言ってんだ。今さらだろ。……いやしかし、葦ってのが引っかかってな」


「葦? あの水辺に生えてる雑草でしょう?」


「葦っていう草は、三メートルにもなることがある。水辺近くによく生えて、柔らかくしなるわりに丈夫で、屋根材や床材にもなる。日本人にとっちゃあ身近で特別な草なんだ。この中つ国は、もともと葦原の国だった……イザナミとイザナギの子として生まれた蛭児は、『良くあらず』として子供の数に入れられず葦船に乗せられ、流された。中つ国を象徴する材木で作った船に乗せたのにも意味があったのかもしれんという説もある……照朱朗、おまえどう思う」


「どうって……乙子のおっさん、翁面とやらは、本当はあんたに何を言ったんだい」


「ほう……今年の夏のころの話だったかな。


『港入りの、葦わけ小舟、障り多み、我が子抱く舟にまみえぬころか』


 ……とな、翁面はよ。なんの脈略も無く、おれにそう言ったんだ」


「……そりゃあ、意味深なことだ。……でもどうしてそれだけで、神話の蛭児になるんだい」


「この乙子に、葦やら舟やらっちゅう自体が蛭児を連想しろってもんだろう」


「なるほど。そういやそうだった」


「ねぇねぇ、その歌、『葦が港への道を邪魔するように、我が子の乗る舟が見えない』……って感じでオッケー? 」


「そう。そんな感じだね。でも『障り』を『我が子抱く舟』に掛けてるンなら、『我が子の舟に危険が迫っている』とも取れるか。もしも船に乗ってンのが蛭児なら、イザナギとイザナミは自分が捨てた子を探してるってことになるよねえ。

 確かにねぇ……翁面がそれを言ったっていうのも、中々に意味深だ」


「どうして? 」


「翁は舞台上の『メッセンジャー』だからさ。先触れをしたり、語り部だったり」


「実際、おれたちは歌の通りになっているからな」


 「葦が邪魔をして、危険が迫っているかもしれない我が子の行方が分からない。……空船と雲児のやつはイッタイゼンタイ、どこに消えたんだか」


「ふむ……それでちっと調べなおしてみた。こっからは趣味のハナシだ。

 蛭児ひるこをな、『昼の子』『日ル子』じゃあないかという説があるんだがね……『日子ひルこ』は、『ヒルメ』と対になる神じゃあないかってな。面白い説だろう? 」


「ヒルメ? それってなんですか? 」


「ヒルメってのは、『稚日女尊わかひるめのみこと』という、天照大神の屋敷にいる側仕えだ。


 この女神に、素戔嗚すさのおが狼藉を働いて死なせちまったから天照大神はブチ切れて岩戸に引きこもる。有名な岩戸隠れだな。

 天照大神の別名が『大日女おおひるめ』だから、妹神だとか、大神自身の別名じゃあないかとか言われている謎の多い女神だが、これを天照大神と仮定して、ヒルコと結びつける仮説がいくつもあるんだ。


 ヒルコなる神は、ヒルメと対になる神ではないか。ヒルコとは、ヒルメ……大神の夫神なのではないか? ……いいや、何らかの思惑が働いて、長子である力ある日子ひルこ神を捨流し、伊邪那岐の子であるという資格を取り上げた。のちに日女ひルめこと天照が太陽として君臨する。これは家督譲りの複雑な構図である。神話を記した当時の情勢が影響しているのだ……なんていうふうにな」


「天照大神はあたしでも知っていますよ。なんだかちょっと、ミステリーですね」


「ミステリー? 違うさ。よく『歴史の謎 古代のミステリー』なんちゅう特番があるがねえ、ありゃあ謎解きにはなっちゃあいないんだ。だって、今ンところ誰にも真実は分からんのだ。最後は視聴者の想像力にゆだねられる。「さて、あなたはこれを信じますか? 」ってな。あれを楽しめるやつは、目に見えねえ神さまってやつを瞼の裏に空想できる才能がある。初詣でお守り買って、財布におみくじ入れとるタイプだね。悪い事じゃあねえんだ。宗教ってのは、生き方を指南するためのものなんだから。


 よくあることでよ、祀る神は同じでも、神社によって伝えられている話はガラリと違うんだな。どれが本当か? たいがいはどっちも本当なのさ。


 ヒルメのこともそうだ。そもそも推理のもとになる『日本書紀』と『古事記』では、大まかな流れは同じでも、名前に充てられた漢字や、生まれる順番、担った役割なんかの細部が違う。違うからこそ、学問的には当時の信仰を推理できる部分もあるんだがね。時流れ、そこにさらに、外つ国から流れて来た『仏教』の流れも加わる。七福神の荼枳尼天だきにてんなんかは、お稲荷さんとして有名だ。

 室町のころ、『蛭子ひるこ』も『恵比寿えびす』と名を変えた。


 蛭のような不具の子から、海の果てから宝船でやってくる福の神に姿を変え、語られる神話も、『蛭子は常世にて成長し、福を携え帰還した』という一種の英雄譚となる。信仰は変化し、神と神は合わさって、また別の形をつくる。


 最初からパターンは二つある。真実はそのうちどれか一つということもない。

 もとになった話は同じでも、土地それぞれの事情と解釈で、その神はになるものなんだ。もはや現代では、神が先に生まれたんじゃあない。ヒトが先にあり、神の形を造ったことが、すべての前提の学問になっている」


「それをあたしたちに言うんですか。お化けのあたしたちに? 」


「お化けだからだろ。あたしらはそれを自覚せにゃならん。亜砂子、ヒトは自分らが思っているより、もっと単純で、怪奇なモンなのさ。形を『これ』と定めたら、それを真実にする力がある……すくなくとも、他の生き物にはそんな力はありゃあしない。乙子の旦那は、それをよくよく分かってらっしゃる。

 神さまがヒトの形してンのは、自分に似せてヒトを造ったっていうわけじゃあ無いんだよ。逆なんだ。科学の進歩で、ヒトはヒトの形を知っちまった。


 レントゲン、顕微鏡、宇宙船、遺伝子、進化と絶滅。星は丸いし、ヒトは猿だった。月にウサギはいないし、空にあるのは燃える石。天上にも神の国は無い。


 亜砂子、あんただって、もともと人間だろう? アンタどうやって死んだあともここにいるのさ。科学的に、人間のルールで説明できんのかい? 」


「そんなもの、分かるもんですか。ただあたしは、未練あっての幽霊なんですから」


「……そう、そういうことさ。人間は根性で現世にしがみつく。人魚の想いは根強いがね、ヒトの想いこそもっと根強いのさ。

 意志をもってして形を『これ』と決めたら命を持って動き出す。ともすれば、あやかしにだって神にだって転じることもザラにあった。逆もしかり。影の具合で、鬼にも神にも仏にも獣にも、シャレコウベにもだ。昔はもっと流動的だったんだよ」


「……じゃあ、人魚もそうだったんでしょうか。形を『是』として、天女から人魚になってしまったんでしょうか」


「そうかもしれない。『おまえは是だ』として、形を定められたのかも」


「自分の形を勝手に決められてしまうって、くやしいことよ。わたしは知っています。そんなのは呪いだ。やりきれないじゃあないですか」


「みたい、じゃなくって呪いなのさ。象は鼻が長く生まれたし、ペンギンの翼は空を飛べない。どんな動物だってオンナジに、自分のかたちは決められない。それでも一度『是』と決まったら、貫き通すしかないんだよ。この世の流れが大きく変わるまではね。


 その流れを、ヒトは『因果』やら『シガラミ』やら『世界との繋がり』やらと呼ぶ。ひとたび流れを外れりゃあ、形も残さず消え失せるだけだ」


「はあぁ……―――――そういうもんですか」



「そういうもん、なんですよ」

 

 ◐


 こぽこぽと水が頭の先まで満ちている。

 頭上のぽっかりと白い孔は、月だろうか。

 寒くはない。暑くもない。ゆるやかな水の流れが、肌を洗って過ぎていく。

 雲児はゆっくりと目を開き、目の前にいる人魚を見た。

 瑞子みずこ人魚は青ざめた顔で、唇を小さく結んで雲児わたしを見つめ返す。床には乾いたすだれ細工のような冷たい床材が敷かれており、貝殻の座布団の上に、わたしという一人は座っていた。閉め切った板戸越しに、蝉の声が聞こえる。


 当たり前だが、目の前に月は無い。

 しかし水の気配は、濃厚にこの部屋いっぱいに蜷局を巻いている。

 自身の手を、握っては閉じてみた。指先まで通った血はあまりに空々しいものがあり、まるで皮膚の上に膜が張ったようだ。

 目玉から勝手に水が滴ってくるのに任せたまま、わたしは、その童女のような人魚に感想を言う。


「……あんたらは存外、似とらんもんだなぁ」

「そうかしら。娘なんて、どれもヨクヨクわたくしに似ていたものだけれど」

「じゃあ、孫には遺伝せんねやね。克巳と巽の方がそっくしやった」

「ふふ……あなたにはそう見えたのね」


 瑞子は慈愛の貌で微笑んで手ぬぐいを取り出すと、身を乗り出して手ずから、濡れたわたしの頬を拭った。その笑みは、記憶に遠い二人の母の顔と重なるものがある。わたしがそれを手の甲で除けると、「仕方ないわね」というような顔をして退いた。

 わたしは指の腹で頬を拭うように擦ると、背筋を正して、その場に頭を擦りつける。


「……こン度は、この雲児のわがままを聴いていただき、ありがとうございます」

「滞りなく儀は済みました。あとは、あなた自身のその前世を、どう思い、どう使うのかも自由でしょう」瑞子はこっくりと、深く一度頷く。

「……しかしね、天際の雲児。何よりも先に、わたくしへの礼をいただきたいの」

「存じております……」

「わたくしは、もう永くはない」

 入口の方で、隠し切れなかった衣擦れの音がした。


 聞き耳を立てる息子の気配を察しているはずの瑞子は、しかし言葉を繋げる。

「……寿命を全うできる沼人魚が、この世に何人いたでしょう。これは幸運なこと。人魚は逆回りに年を取るわ。わたくしの最後は、何も分からない赤子でしょう。わたくしには、その最後が近づいている。すでに日に何度も、夢うつつの境が無くなってしまう時があるの。わたくしの耳には、わたくしが壊れていく音がするのよ。わたくしはその前に、すべてのことを終わらせたい。最期のとき、共にする伴侶は選びました。あの人のややこも産めなかったわたくしだけれど、この身が朽ちるときには共に……そうあの方は申してくれました。彼は何も言わないけれど、わたくしは終となるその時に、何も分からない赤子ではいたくない。

 ……わかるかしら、雲児」

「はい」

「次に会う時には、わたくしはわたくしでは無いかもしれない」

「はい。お約束通り、何が起こっても、人魚の呪いだけはこの雲児が解いてみせましょう」

「お頼み申します。……どうか、どうか……わたくしがすべて忘れる前に」



 帰路につく電車に揺られていると、涙腺がやけに緩んだ。

「お嬢さん、何を泣いているの」


 夏休みの陽気の日に、硝子を額に俯いて鼻をすする中学生をどう思ったか知らない。上品なレモン色のカーディガンを羽織ったご婦人は、すくなくとも後ろ髪の長さで、わたしを少女と思ったようだった。かといってこの身は、少年ともいえない。

「いえ……」

 ちらりとしか顔を上げられず、言葉少なにまた俯いてしまったわたしに、「涙は殿方の前で流したほうが素敵よ」と、婦人はハンカチを差し出した。


「いいえ……失恋だとか、そういうんじゃあ無いんです」わたしは見知らぬ老婆に吐露した。「……ただ、ちょっと……そう。あれは悲しいことだったなあって、ふいに思い出してしまっただけなんです」

「ああ……」婦人は深く首を垂れた。「わたしにも覚えがあるわ……そうね。夏が終わって、少し寒くなった夜なんて……とうに終わったことで、勝手に悲しくなるの。勝手に出てくる涙は少し恥ずかしいけれど、人間ならこればかりは繰り返しあるものよ」




 我が家の最寄りは、これぞ片田舎というような小さな駅である。それでも駅前は商店街があり、片田舎らしくほどほどに賑わっていた。

 夕日に錆びた屋根と鉄塔が見下ろす下を通り、わたしは丸いポストのある踏切を越え、川沿いに帰路に就いた。

 野球少年がミットを鳴らす歩き慣れた河川敷を、いつぞやのような真っ赤な夕日が炙っている。

 夏の夜を落とす前の赤は、ゆらゆら揺れる篝火に似ていた。……もしくは、篝火にかざしたこの手のひらの色にも見える。

 血潮の色をした太陽が、昼に幕を落とそうとしているのを横目に、わたしは強く頬を叩いて、家路への道を駆け出した。

 やがて閑散とした住宅街の端を通り過ぎ、田畑の広がる小道を行き、薄の蔓延る雑木林のある坂道を進む。高々と茂った藪を石塀が囲む『ミツクミさん』のお屋敷は、夜な夜なお化けが明かりを灯していると噂される廃屋である。

 そのお隣さんが、乙子誠光法師の住まいであった。

 門前で影法師のような人影が、道を掃いている。わたしに気が付いた空船は、白い面を上げて手を止めた。


「おかえり……おや」

 面の奥の目が、まん丸く見開かれる。

「おまえは……玖三帆? 」

 わたしは、シィィイ……と、唇の前にひとさし指を立てる。

 面はまじまじとわたしを見つめ、また言った。

「……いや……それとも」

 暗転。

「……おまえは誰だ? 」

 明転。

 わたしは過去へと落ちていく。


「ヤマタカツミだな! 名を名乗れ! 」

「やっ、矢又克巳です……」

「あんたの名前は? 」

「葦児玖三帆」


 暗転。


「玖三帆が殺される……おちうどン滝に落とされる……」

 消し幕。

「しやからおれと、山を降りようか。なあ、克巳……」

「ウン……ッ」

 消し幕。

「玖三帆ォ!」

 明転。

「ネエ、カッちゃん見てよ。……きれいな夕日やねェ。お日様がホオズキみたい」

 暗転。

「……ぼくらは誰なんやろか」

 明転。

「何が起こっても、人魚の呪いだけはこの雲児が解いてみせましょう」

「お頼み申します。……どうか、どうか……あの人のことを忘れる前に」

 暗転。

「ねえ、カッちゃん。ぼく、思い出したんよ」

「雲児ッなにしやがるっ……―――――クウっ」

 消し幕。

 明転。

 暗転。

 明転。

 暗転。明転。暗転。明転、暗転………。


 轟……轟轟……轟轟轟轟…………水が流れる音がする。



「なあ、クウ……」

 女面がいなくなったかわり、翁がわたしの名前を一声呼んだ。


「……もうええじゃろう? わしらの介錯は仕舞じゃ」

「……まだ話は終わっとらんど。最後まで話せ。知っとること全部や。……しやないと帰れん、帰らん」

 わたしの言葉に、翁は顎の髯をこすりながら唸った。「フウム……」

「確かに……かぶりは取らねばのう……」翁が言うと、霧が晴れていく。

 わたしは翁の手を取って緩慢に立ち上がり、霧の向こうを見渡した。

 白い筋のように対岸が見えている。

 すなわち、時が迫っているのだ。

 わたしは再び、船底に座した。

「……あの夏に、おれたちに何が起こったんや」

 言うと、翁が首を垂れてため息をついた。


 すると、ふんわりと輪郭がぼやけた翁の姿がしゅるしゅると縮んでいく。現れた影は、一回り小さい。土気色の肌をした小男は、白い面を傾げて口を開いた。

「おやおや。大詰めはわしかいな? 」

「……よりにもよってあんたかいな。河津」

「そう釣れないこと言うなよぉ。あっしでも役不足ってこたぁ無いはずだぜ」

 沼津はポンと膝を叩き、白装束に包まれた痩せた胸をむんと反らした。

「そう……時はむかし、翁が竹を切るころに――――」

「真面目に」

「……真面目サア」まるで心外というように、河津は声を固くした。

「おいらは二番目に古いんだ。面子じゃあ、あいつに会ったのも最初だものぉ」

「あいつ? 」

「釣眼のやつだよウ。おいらはズウッと、翁よりも先に、あの龍神サマと一緒だったんだもの。おいらの歴史はあいつの歴史といってもいいのサァ」

「もちっと分かりやすく言えんのか」

「わしはな、クウ。土佐衛門さ。水で死んだやつらの魂なのさ。わかるだろう? 」

 頭を掻いて、河津は言う。

「……あっしらは、どいつもこいつも水に食われやしてナア……いっかな釣眼のやつとの縁は切れやしません」

「しやったらお前、釣眼の名前を知っとるんか」

「モチのロンさ。奴の名こそが、我らをつくったんだから」

「その名前は? 」

「瀧川のおかみさま。あるいはオハバリの刀から滴った闇龗くらおかみ

 あるいは「よくあらず」として、父母に認められず葦船で流された不具の御子蛭児ヒルコ。瀧川の龍神と、葦児に神様と祀り上げられた足の立たない赤ん坊……あわさって釣眼おかみさまなのサア。やつめ、自分のことも忘れてンだ。あいつのことを覚えてるヒトは忘れたマンマで死んじまったから。可哀想に……人間ってのはなんてアコギなことをする生き物なんだろうネェ」


 ◐


 次生蛭兒(次に生まれたのは蛭児でした。)。

 雖已三歲(その子は三つになっても)、脚猶不立(脚が立たなかったのです。)。

 故載之於天磐櫲樟船(そのため、天磐櫲樟船に乗せ、)、而順風放棄(風の向くままに流しました。)。

 ◐


 興而生子(生まれた子は)、水蛭子(水蛭子であったため)、此子者入葦船而流去(母子は葦船に乗せ、水に流してしまった。)。

 次生淡嶋、(次に淡島が生まれたものの、)是亦不入子之例(父母はを子供の数とはしなかった)。

 ◐


 復劒頭垂血、激越爲神、(剣から血が垂れ、神となりました。)號曰闇龗、次闇山祇、次闇罔象(まずは闇龗、次には闇山祇、闇罔象と続いて生まれました。)。

 ◐


 次集御刀之手上血、(迦具土神を切った刀の柄に付いた血が)自手俣漏出(その手指から漏れ)、所成神名訓漏云久伎(流れ落ちて生まれた神の名を)、闇淤加美神淤(闇淤加美神と云う)。




(引用・出典/古事記/日本書紀)

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