第9話 近付きたい
校外学習が終わると、三者面談期間が始まった。
結局、私は進路希望調査票に文系の大学を志望と書いて出してしまった。
漫画の専門か悩んだけど、専門行かないでも漫画家なる人いるわけだし。
大学で知識を蓄えて漫画に活かす方が良いと思ったからだ。
それに
漫画家になれる確証は無い。
まだ一度も大賞をとってないのだ。
保険を私は用意してしまったのだ。
もしかしたら漫画家を諦めなければいけなくなる時が来るかもしれないって。
自信無さすぎかな?私。
でも
「桜木さんは成績が優秀だし、F女子大学の合格圏内と言えるでしょう」
「あ、ありがとうございます。先生の指導が良いんですよ。ね?蜜葉」
「う、うん」
三者面談中、母は先生が私を褒める度にニコニコしていた。
母は私が漫画家志望だという事を知らない。
もし、知ったら怒るかな?
お父さんも怖いな、怒った時を考えると。
いつかは言わなきゃいけないのに。
私の意気地無し!
成績良し、志望大学も有名大学。
母は三者面談中、ずっと機嫌が良かった。
もし、私が本音を言っていたらどうなっていたんだろうか。
あ・・・
三者面談が終わり、教室を出ると、高宮くんに会った。
「た、高宮くん!」
「桜木、三者面談終わったのか」
「う、うん」
「はじめまして。桜木さんのクラスメイトの高宮陸斗と申します。桜木さんとは部活も同じでいつも仲良くさせて頂いております」
高宮くんは丁寧に母に挨拶をした。
「あ、あら!ご丁寧にどうも。蜜葉の母です。あれ、蜜葉。部活なんて入っていたの?」
「び、美術部だよ!」
「そう?知らなかったわ」
嘘ついちゃった!
高宮くん、あれ?って思うよね!
「た、高宮くんは次?三者面談」
「ん。ただ、まだ父さんが来ていないから待ってる」
「た、高宮くんのお父さんか」
高宮くんみたいにぼんやりしているイメージが。
「お母さんは?」
「うち、基本的にそういう進路系の話は父さんに任せてるから。母さんは仕事」
「そ、そう」
「じゃあ、蜜葉。お母さんは先に帰るわね」
「あ、お母さんっ」
「ごゆっくり!」
お母さんはにやっと笑って言った。
なんか気遣われた!?
お母さんは先に帰ってしまった。
「桜木のお母さん、可愛らしい人だな」
「へ?」
「桜木に似てる」
「あ、ありがとう!あ、高宮くんのお父さんってどんな人なの?」
「めちゃくちゃ真面目で堅い人だ」
「そ、そっか」
「なぁ、桜木」
「ん?」
「お母さんに創作研究部の事話してないのか?」
「えっ?」
「さっき美術部って」
「ま、漫画家志望って事内緒にしてるから言えなくて」
「どうして?」
「反対するに決まってるし。今の実力じゃデビューできる確証はないから。心配かけたくないんだ」
「でも、桜木は漫画家になりたいんだろ?」
「うん」
「桜木の人生だ。親が決めるものじゃないと思うけど・・・」
「え・・・」
「・・・陸斗」
「あ、父さん」
あ・・・
高宮くんのお父さんが来たようだ。
高宮くんに似てクールな感じの人だ。
髭が濃く、黒い髪は肩につくくらいまである。
なんだか厳格そう。
「遅かった、父さん」
「すまなかったな。渋滞に巻き込まれて」
高宮くんっていつもゆるゆるだけど、お父さんは全然違うんだなぁ。
「父さん、早く。先生が待ってる」
「腕を引っ張るな。分かった、分かったから」
「じゃあな、桜木」
「あ、うん」
「失礼するよ、お嬢さん」
高宮くんはお父さんと教室へ。
高宮くんの言葉が胸に突き刺さる。
私の人生は親が決めるものじゃない・・・か。
帰らなきゃ!
私は教室に戻る。
すると
綾ちゃん・・・?
綾ちゃんは切ない表情で窓の外を眺めていた。
「綾ちゃん?」
「あら、みっちゃん!三者面談終わったんだ!みっちゃんママに挨拶したかったわ」
私が声をかけると、綾ちゃんはいつもの明るい綾ちゃんに戻る。
「綾ちゃんは高宮くんの次?」
「うん」
「良かった!お父さん来るんだね」
「来ないわ」
「えっ?」
「仕事が忙しいの一点張り。弟の授業参観には必ず行く癖に、ね?」
「綾ちゃん・・・」
「父さんにとって僕は恥だから。三者面談は僕一人で参加かな」
綾ちゃんは笑ってるけど、辛そうだ。
「ひどいよ。綾ちゃんのお父さん!綾ちゃんは大事な息子なのに・・・」
「みっちゃん?」
「綾ちゃんは恥ずかしい存在なんかじゃないよ」
私は綾ちゃんの手を握り、言う。
「みっちゃん・・・」
「許せない!綾ちゃんのお父さん!」
「あたしは大丈夫よ、みっちゃん」
「でも・・・」
「あたしには皆がいるから」
「うん・・・」
「な、何でみっちゃんが泣きそうなわけ?」
「うっ・・・」
「みっちゃんは優しいね、本当に。僕、みっちゃんのそういうとこ、大好きだよ」
綾ちゃんは私の頭を撫で、言った。
「あ、綾ちゃん!!」
「ふふっ。なんだかお腹空いてきちゃったな」
「じゃ、じゃあ!購買行こ」
「うん!」
だけど
「お前がそんな分からず屋だとは思わなかった!」
「父さんがなんと言おうと決めた。俺は諦めない」
「陸斗、お前!!」
「俺は自分のやりたい事をやる!俺の人生だから」
「お父さん、高宮くん!お、落ち着いて」
三者面談が行われている教室の前を通ると、高宮くんと高宮くんのお父さんが言い争う声が聞こえた。
「その優秀な頭脳を活かせる仕事をしろ!声優なんて。そんな博打な仕事」
「俺が何をやろうと俺の勝手」
「とにかく!俺は声優の専門学校への進学なんて認めん!絶対にな」
「あぁ!高宮さん!」
高宮くんのお父さんは怒って出て行ってしまった。
ありゃりゃ。
「珍しい事もあるものね。陸斗が声を張るなんて」
「声優になる夢だけは譲れないものだから」
綾ちゃんの面談が終わると、私達は学校近くのカフェでお茶をする事に。
「お父さん、帰っちゃったね」
「む・・・父さんの分からずやめ」
「声優の専門学校行くって話したんだ?高宮くん」
「ん。俺の夢だから。大学進学は絶対しない」
高宮くん、学年トップの成績だからなぁ。
お父さん的には国立大学進学して一流企業に就職して欲しいっぽい。
「陸斗があんなに怒るの珍しいわね」
「父さん言ってた。声優なんて選ぶ奴はバカだって。許せなかった」
「陸斗は本当に声優になりたいのね」
「ああ。絶対に諦めない。博打なのは分かってるけど。だから、父さんにどう思われようとも構わない。俺は俺の生きたいように生きる」
「陸斗らしいわね」
高宮くんは私と違う。
ちゃんとお父さんに本音で話してちゃんとぶつかってる。
やっぱり高宮くんはすごい。
私はお母さんに本音を隠してしまった。
「今日帰ったら殴り合いになるかもしれない」
「だ、大丈夫?高宮くん?」
「認めさせる為ならやむを得ない」
「すごいね、高宮くんは」
「だから、桜木も絶対諦めるな。夢」
「えっ?」
「俺、桜木に漫画家なって欲しい。だから、ちゃんと親と話すべきだ」
「高宮くん・・・」
「俺も戦うから」
高宮くんはちゃんと向き合ってる。
自分の夢を全力で追いかけてる。
私は自信が無くて、お母さんに話す勇気も無くて。
このままじゃいけないよね。
「私・・・頑張って話してみるね」
「ああ」
「もう!ずっるーい!あたしも仲間に入れてよねっ」
「綾斗・・・」
「まだあたし達は15歳!まだまだ若いんだから。今が頑張り時!」
「うん。そうだね!」
頑張らなきゃ。
漫画家になる為にも。
「・・・ただいま」
高宮くんと綾ちゃんと別れると、私は帰宅。
「蜜葉、おかえり。ずっと、さっきの男子と話してたの?彼氏かな?」
「ち、違うよ。高宮くんはそんなんじゃないから」
「えー?残念」
お母さんに話さなきゃな・・・。
「あのね、お母さん!」
「何?」
「私・・・さっき言えなかったんだけど・・・」
「蜜葉?」
「私、漫画家を目指してるの。編集部にたまに持ち込みもしてる・・・。私、漫画家になりたいの!ずっと隠してた。ごめんなさい!」
「蜜葉。漫画家だけはやめておきなさい。安定職ではないでしょう?」
「分かってる!でも・・・諦めたくないの。ずっと大事にしてきた私の夢だから」
「蜜葉はF女子大学に行くんでしょ?お母さんは蜜葉にちゃんとした職に就いて欲しい。漫画家なんて苦労するのが目に見えてるわ。勉強頑張っているというのに、漫画家じゃ活かせないじゃない。お母さん嫌よ?漫画家で挫折して蜜葉がニートにでもなったら。貴方は優秀な子なんだから。漫画なんかで人生を棒を振らないで頂戴」
「お母さん!!」
やっぱり反対されちゃった。
でも、高宮くんも戦ってる。
私も頑張らなきゃ。
お母さんを認めさせるには結果を出すしかない。
「編集部に持ち込むネーム作らなきゃ」
大賞に出したいし!
「おはよう、蜜葉ちゃん」
「あ、おはよう!優里香ちゃん」
「何書いてるの?」
「新しい漫画のキャラ設定!」
「あ、そっか。蜜葉ちゃん漫画家志望だっけ」
翌日、私は学校で新しい原稿用のキャラ作りをする。
どうしようかな?
「高宮陸斗!」
「あ、桜小路くん」
「次はテストで勝負だ!順位が上だった方が下の相手の言う事を聞く!」
「ん。分かった」
また桜小路くんが高宮くんに絡んでる。
「ちょっとあんた!また高宮くんに絡んで!」
「冴島!」
「高宮くん、毎回学年トップだよ?毎回英語の成績悪いあんたが何言ってるのよ」
優里香ちゃんは桜小路くんに注意しに行く。
「うるせぇ!高校生の俺様は昔の俺とは違う!天才的頭脳の持ち主だ」
「言動幼稚な奴が何言ってるのよ」
「んだと?」
「ま、まああんたが英語心配なら教えてやろうと思ったけど・・・いらないなら良いわ」
「い、いらないとは言っていない」
「えっ?」
「え、英語が心配なわけではない!ただ復習は大事だからな!ははは」
「じゃ、じゃあ!今日部活無いから付き合いなさい」
「構わん」
これだ!
私はキャラ設定を書き始める。
優里香ちゃんと桜小路くんをモデルにキャラ作りしよう!
「良い作品が作れる予感がしてきたぁ!やってやるぞー!」
「桜木?」
「わっ!た、高宮くん!」
は、恥ずかしい!
変なテンションになってるとこ見られた!
「頑張ってるな、桜木」
「う、うん。お母さんに話したら反対されちゃったから認められる為に結果出さないとね。目指すは大賞!」
「そうか。頑張れ、桜木」
「高宮くんは?」
「父さんと冷戦状態だ」
「そ、そっか」
高宮くんとこも大変なんだなぁ。
「はよ。陸斗、桜木」
「お、おはよう!姫島くん」
「結斗、おはよう」
「今日、三者面談なんだ。マジだりぃ」
「おばさんが来るのか?」
「ああ」
Rio先生がうちの学校に!?
「で、折り入って頼みがある。桜木」
「へ?」
「琴莉と遊んでやってくれないか?三者面談の後、俺も母さんも用事があって遅くなるんだ」
「琴莉ちゃんと?」
「ああ。まだ一年生だし、家に長時間留守番させられねぇからな」
「分かった!任せて!」
「桜木、俺も・・・行く」
「高宮くんも?」
「俺も琴莉に会いたいし」
「分かった。綾ちゃんは・・・」
「綾斗は今日、用事があるって言ってたぞ」
「そっか」
「琴莉には言ってあるからよ」
「わ、分かった!」
「悪いけどよ、帰るの7時過ぎるから夕飯も頼めるか?食材勝手に使って良いからよ」
「う、うん!」
高宮くんと琴莉ちゃんと3人で遊ぶんだ!
楽しみだなぁ!
放課後になると、私は高宮くんと姫島くんの家へ向かう。
「桜木も結斗んち行った事あるんだよな?」
「うん。琴莉ちゃんと遊んだよ。姫島くんがパエリア作ってくれて美味しかった」
「そうか。結斗が俺以外を家に、か」
「高宮くん?」
「桜木も結斗の特別・・・」
「特別?」
高宮くんはどこか切ない顔をしていた。
「こんにちはー!桜木蜜葉です!琴莉ちゃん、いるー?」
『お姉ちゃん!今、開けるね!』
姫島くんの家に着き、インターホンに呼びかけると琴莉ちゃんが返事をした。
「あ、りっくんもいるー!わーい!」
琴莉ちゃんはドアを開けると、高宮くんに抱きつく。
「元気だったか?琴莉」
「うん!今日はりっくんも遊んでくれるの?」
「ああ。お兄ちゃんとお姉ちゃんがたくさん遊んでやる」
高宮くんは琴莉ちゃんの頭を撫でながら言う。
高宮くん、本当に優しい顔してる。
今だけ琴莉ちゃんになりたいとか思ってしまった!
私のバカ!
「お姉ちゃん、魔法少女リリア一緒に見よう!面白いよー!」
「うん。お姉ちゃん、ちゃんと見た事ないんだよね」
「こーら、琴莉」
「なーに?りっくん」
「お姉ちゃんと遊ぶ前に何かする事があるだろ?」
「なんだろぉ?」
「宿題。ちゃんとやってから遊ぼうな?」
「忘れてたぁ!算数のプリントがあったんだった」
「ほら、出せ」
高宮くんがお兄ちゃんしてる・・・。
「わあ!問題がたくさんあるよぉ」
「ほら、琴莉。7+7は?」
「えっと、1・2・3・4・5・・・」
琴莉ちゃんは指を使って足し算をする。
「14!」
「正解だよ!琴莉ちゃん。やった!」
「えへへ。でも、まだ琴莉・・・指を使わないと足し算できないなぁ」
「ほら、まだまだあるぞ?琴莉」
「うん!」
「13+2は?」
「んー!指が足りないよぉ!」
琴莉ちゃん、頑張ってる!!
「船に19人乗りました。19人のうち、7人は座り、残りの人は立っています。立っている人は何人でしょうか?」
「えーっと・・・」
「琴莉、19-7しよ?」
「が、頑張る!」
琴莉ちゃん、計算まだ大変なんだなぁ。
一年生だもんね。
「できた!12人!」
「正解。よくできましたー」
高宮くんは琴莉ちゃんの頭を優しく撫でる。
「もう遊んでもいいー?りっくん!」
「ああ。琴莉は宿題ちゃんとぜーんぶできたからな」
「わーい!お姉ちゃん、リリア見よっ」
「うん!」
妹ができたみたいで本当に嬉しいなぁ。
「りっくんとお姉ちゃんもリリアのダンス踊ろう?簡単だよ!お兄ちゃん、すぐに覚えたからね!」
「うん!」
「結斗が覚えられたなら余裕だな」
琴莉ちゃんの大好きな魔法少女リリアのオープニングが流れると、私達はダンスを踊る。
「わっ!りっくん、上手ー!!」
「結斗より上手か?」
「ううん。お兄ちゃんのが上手!」
「そっか、そっか」
「お姉ちゃん、左手が先だよ!」
「わっ!反対になってた?」
「こっちからだよー!」
私、本当にダンスからっきしだ!
「この人が魔王レルア!いつもリリアにいじわるする悪いヤツなんだよー!」
「怖いね?」
「でもね、リリアがレルアにやられてピンチの時はナイトのミナトくんが助けてくれるの!」
「かっこいいね!」
「でしょ?お兄ちゃんみたいでかっこいいんだ!」
アニメが始まると、私達は琴莉ちゃんと話しながらアニメを見る。
魔法少女アニメ見るのは小さい頃以来だ。
結構面白いんだなぁ。
10話くらい見るとあっという間に17時に。
「見て見て!レルアも描いたのー!」
「わっ!上手だねー!」
「琴莉、絵が上手だな!」
「ありがとう!!」
「高宮くん、そろそろ夕飯の支度するね?」
「桜木、手伝おうか?」
「大丈夫だよ!高宮くんは琴莉ちゃんと遊んでて」
「ああ」
「りっくん!一緒にゲームしよう!」
「いいよ。お兄ちゃん強いぞ?」
「負けないよーだ!」
私は食材を確認する。
この食材ならオムライスとサラダとスープが良いかな?
「りっくん、テニス上手ー!また点入れられたー!」
「ほら、負けてるぞ。琴莉。頑張れ、頑張れ」
「りっくんに勝ちたいー!」
高宮くんと琴莉ちゃん、楽しそうだ。
なんだか微笑ましいなぁ。
高宮くん、琴莉ちゃんと本当に仲良しなんだなぁ。
「うん。スープ良い感じかな?」
あっ!
サラダ作る前に琴莉ちゃんに嫌いな野菜ないか聞いておこうかな?
スープが完成すると、私は琴莉ちゃんに話しかけに行く。
だけど
高宮くんは琴莉ちゃんと寄り添い、眠っていた。
か、可愛い・・・。
写真撮りたいけど、起きちゃうかもしれないよね?
「ふふっ。親子みたい」
本当に可愛いなぁ、2人の寝顔。
私は押入れを漁り、毛布を一枚取り、高宮くんと琴莉ちゃんにかけた。
「オムライスとサラダもオッケー!」
全て完成した頃には18時になっていた。
「高宮くん、琴莉ちゃん?ご飯だよー!」
「ん・・・」
「お姉ちゃん・・・?」
私が声をかけると、2人は目覚める。
「わあ!美味しそう!」
「琴莉ちゃんのは特別!ケチャップでうさぎさん描いたよ」
「わあ!すごく可愛い!!お姉ちゃん、ありがとう!」
「すげぇ美味そう」
「さ、食べよう!いっただきまーす!」
私達は席につき、食事を始める。
「美味しい!お姉ちゃん、美味しいよー!」
「ありがとう!嫌いな野菜ない?大丈夫?」
「うん!琴莉、お野菜だーいすき!」
「・・・桜木」
「ん?」
「めちゃくちゃ美味い。ありがとうな」
高宮くんは笑顔で言った。
「い、いえ!」
「桜木は良い嫁になるんだろうな。夫になる奴は幸せだ」
えっ!?
「あ、ありがと・・・」
結婚したらこんな感じなのかな?
旦那さんがいて、子供がいて。
妄想するとかなりドキドキしちゃう。
「あ、琴莉。ボロボロ零してる」
「ふぇっ?」
高宮くんのお嫁さんになれたらすごく幸せなんだろうなぁ。
「琴莉、お風呂入ってくるー!」
「はーい」
夕飯を食べると、琴莉ちゃんはお風呂へ。
姫島くんが帰るまで待ってよう。
「桜木、俺が洗い物する」
「えっ?でも・・・」
「桜木は休め」
「あ、ありがとう!」
今日はすごく幸せだなぁ。
高宮くんと一気に近付けた気がする。
でも
高宮くんは私の事意識してないんだろうな。
「ね、ねぇ!高宮くん!」
「なんだ?」
「た、高宮くんってどんな女の子が好き・・・なの?」
き、聞いちゃった!
「考えた事無かったな」
「そ、そうですか」
「桜木は?」
「えっ?」
「どんな男が好き?」
「ふ、普段ぼんやりしているけど、突然男っぽいとこ出す人かな?天然なとこが可愛いってのも良いかな」
って!
それ、まんま高宮くんじゃん!
「桜木、変わった趣味だな」
貴方の事なんですけどね。
「あはは・・・」
「好きってどんな感覚なんだ?俺は恋愛に無頓着だからよく分からん」
「うーん?その人に触れたいとか、その人と一緒にいるとドキドキするって感じかな?」
「そうか。勉強になるな」
高宮くんには恋愛っていう概念すら無いんだなぁ。
なかなか難しいのかな、高宮くんに意識してもらうの。
「高宮くんは好きな人、今いないんだね」
「俺は・・・」
「お姉ちゃん!一緒にゲームしよ!」
琴莉ちゃんがお風呂から出てきた。
「う、うん!」
高宮くん、何か言いかけてた?
って・・・
「琴莉ちゃん!髪、まだ濡れてるよ?」
「えっ?」
「お姉ちゃんが乾かしてあげる!」
私はドライヤーを取りに行くと、琴莉ちゃんを膝の上に乗せる。
「ちゃんと乾かさないと風邪引いちゃうよー?」
「はーい!ありがとう、お姉ちゃん!」
私は琴莉ちゃんの髪を乾かす。
「気持ち良いなぁ」
「琴莉、羨ましい・・・」
「えっ!高宮くん!?」
「髪の毛、自分で乾かすの面倒くさいから俺も桜木にやってもらいたい」
わ、私が高宮くんに!?
考えただけで心臓がドキドキしてくるよ!
「えへへ。良いでしょー?りっくん!」
「琴莉、ムカつく」
「わあ!りっくん!ほっぺたつねらないでー!」
「た、高宮くん!だめだよ!そんな事しちゃ」
「はーい」
何、今の返事!
可愛い!
「ただいま・・・」
「あ、お兄ちゃんだ!」
姫島くんが帰ってきた。
「な、何なんだよ・・・その家族みたいなやりとり!」
「結斗も桜木に髪乾かしてもらいたいのか?」
「ば、バカ!そ、そんな子供みたいな事・・・」
「お兄ちゃん?顔まっかっかー」
「ずるいんだよ、琴莉は」
姫島くんも琴莉ちゃんのほっぺたつねった!
「お兄ちゃん!」
「なぁ、桜木」
「ん?何?姫島くん」
「今度の日曜、空いてるか?」
姫島くんが突然私に聞く。
「空いてるよ?」
「じゃ、じゃあ!俺とデートしろ!いいな?」
姫島くんは私の手を取り、言った。
えっ?
えぇっ!?
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