第6話 杉江統一

「何故、この人間と言う生物は毎日毎日同じ

ことに繰返しに耐えられるのだ。我以上の忍

耐力に感嘆するわ。」


「我があるじよ、我があるじと比べるには地球人はあ

まりにも矮小だと思いますが。」


 応えたのは七野修太郎の家庭教師という名

目で住込みで働いている(家族の記憶には

が細工をしたようだ。)

杉江統一という青年だった。最近まで琵琶湖

大学という一風変わった大学に生徒兼助手と

して在籍していたのだが、退学して七野家に

来たらしい。手配はすべて

が行った。


「それと、よろしいですか?」


「なんだ。」


「今後暫くはそのお姿で七野修太郎としてお

暮らしになられるのであれば、少し話口調や

人間関係にも慣れていただく必要があります。

僕は七野修太郎の家庭教師になりますので、

『先生』とか『杉江先生』と呼んでいただか

なくてはなりません。そして、僕は『修太郎

君』と呼ぶことになります。」


「なんだ、それは。」


 は不満そうだった。元の身体な

らそうでもないのだが、この人間の身体では

感情が表情にそのまま出てしまう。元々隠す

ような環境になかった所為なのだが。


「お前を『先生』と呼ばなくてはならん日が

くるとは思いもしなかったわ。」


「そう仰らずに。から

も言われているのではなかったですか?」


「ふん。あいつもあいつだ。早く元に戻る方

法を見つけてくるべきだ。もしかしたら、あ

奴のことだ、この状況を面白がっておるので

はなかろうな。」


「その可能性は否定できません。」


「おい!」


「冗談です。彼は彼なりに真面目に探してい

ると思いますよ。」


「仕方がない、今回はあ奴とお前の言に従う

こととする。一興だと思うことにしよう。」


「よろしくお願いします。では、早速、修太

郎君、今から数学の勉強をしようか。」


「なっ、なんだと。我が勉強をするのか。」


「当たり前です。普通に高校生活を送ってい

ただくのですから、試験もあります。どんな

内容なのか、事前に把握しておかないと、低

い点を取ったら『やっぱり白痴の王なんだ。』

とか言われますよ。」


 誰にそう言われるのかはこの際置いておい

ても、全くもって納得のいかない

だった。

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